東京の森林の現状

1.多摩地域に多い東京の森林

東京の森林は東京都の面積の約4割を占めています。森林の約7割は多摩地域西部に偏在し、その4分の3が私有林になっています。また、多摩地域では森林の約6割が人工林で、全国(46%)に比べて高い人工林率となっています。

ランドサットから見た東京(1993年5月TM/R3G4B1)

ランドサットから見た東京(1993年5月TM/R3G4B1)

多摩地域の所有形態別森林面積(2008年)

多摩地域の所有形態別森林面積(2008年)

東京では、所有規模が1ヘクタールに満たない小規模な森林所有者が約7割を占めています。さらに、その地域に住んでいない不在地主が約3割(奥多摩町においては約4割)存在しています。そのことが森林の多面的機能の発揮や、効率的かつ安定的な林業経営を妨げる大きな原因となっています。

2.偏った林齢構成

多摩の人工林の多くは、昭和30年代から40年代に植えられており、現在、木材として利用可能な50年生前後となっています。しかし、多摩の森林は、急峻な地形が多いことや所有が小規模に分散していることなどによる伐採、搬出などのコスト高と木材価格の下落とがあいまって林業が低迷し、伐採されずに林齢を重ねた森林が増加し、偏った林齢構成となっている。

人工林の林齢構成(多摩)

(ha)人工林の林齢構成(多摩)(年生)

人工林の約7割を占めるスギは、高齢になると大量のスギ花粉を飛散することから、偏った林齢構成は、花粉症患者増加の一つの原因となっています。
また、スギは、他の樹種と比較して若い時の二酸化炭素吸収能力が極めて高い樹種ですが、高齢になるとその量は、極端に減少します。

スギのCO2吸収量及び雄花の数

(t-CO2/ha)スギのCO2吸収量及び雄花の数(億個/ha)
(年生)

参考資料:森林・林業白書、スギ花粉動態調査(林野庁)

間伐が遅れた人工林(檜原村)

間伐が遅れた人工林(檜原村)

間伐が適切に行われないと林内が暗くなり、下層植生が少なくなります。
下層植生が少なくなると降雨により土砂が流出しやすくなります。

雪害を受けた人工林(日の出町)

雪害を受けた人工林(日の出町)

間伐が適切に行われないと林内が暗くなり、下層植生が少なくなります。
下層植生が少なくなると降雨により土砂が流出しやすくなります。

土壌流出が進んだ人工林(奥多摩町)

土壌流出が進んだ人工林(奥多摩町)

間伐が適切に行われないと林内が暗くなり、下層植生が少なくなります。
下層植生が少なくなると降雨により土砂が流出しやすくなります。
多摩地域はほとんどの地域が急傾斜地で土壌流出が発生しやすいという特徴があります。

荒廃した人工林(奥多摩町)

荒廃した人工林(奥多摩町)

適切な森林管理が行われなかったために台風による被害が発生した事例。
被害が大きくなるほど復旧に要する費用が膨大になるので、初期の段階での早期対応が必要です。

3.シカ被害の長期化

多摩川上流地域では、シカ生息数が増加し、平成16年度の調査では、生息数が約2000頭に達し、増えすぎたシカの影響により、農林業被害はもとより、貴重な自然植生の喪失、土壌の流出による土砂災害など多方面で被害が発生しました。
そのため、平成17年度よりシカの頭数管理を強化してきましたが、シカの生息数は、隣接県からの移入や近年の温暖化に伴う小雪等により、平成19年12月の調査では、約1400頭と依然高水準となっています。また、シカ被害地は、奥多摩町の多摩川北岸地域から檜原村や青梅市に拡大しています。このため、新たな被害地も発生しています。

裸山(奥多摩町)

植林されないために土壌浸食が拡大している(右側)。
土壌浸食が進行すると、次に植林する時に健全な森林を育成することが困難になってしまいます。
持続可能な森づくりを行うためには早急に植林することが必要です。

裸山(奥多摩町)