労働情勢(2020年10月31日現在)
東京都では、労働・経済情勢や労使の動向を調査把握しています。最近の情勢をまとめましたので、掲載いたします。
1 労働情勢
9月完全失業率は3.0%-総務省労働力調査
総務省統計局は10月30日、「労働力調査(基本集計)令和2年9月分」を発表した。9月の完全失業率(季節調整値)は3.0%で前月と同様の結果となった。就業者数は6,689万人で、前年同月に比べ79万人減少し、6か月連続の減少となった。完全失業者数は210万人で、前年同月に比べ42万人増加し、8か月連続の増加となった。
産業別就業者では、前年同月比で「宿泊業,飲食サービス業」、「製造業」、「農業,林業」などが減少となった。
現金給与総額は前年より1.3%減、所定外労働時間は14.1%減-厚生労働省毎月勤労統計
厚生労働省は10月23日、「毎月勤労統計調査(令和2年8月分結果確報)」を発表した。事業所規模5人以上の事業所結果(確報)によると、現金給与総額は前年比1.3%減の273,243円となった。
また、総実労働時間は前年比5.1%減の128.8時間となり、このうち所定外労働時間は前年比14.1%減の8.5時間となった。
一般職業紹介状況(令和2年9月分)
厚生労働省は10月30日、「一般職業紹介状況(令和2年9月分)」を発表した。
その発表によると、9月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月から0.01ポイント低下し1.03倍(正社員0.78倍)、都内の有効求人倍率(受理地別・季節調整値)は前月から0.03ポイント低下し1.19倍であった。
監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成31年度・令和元年度)
厚生労働省では10月23日、労働基準監督署が監督指導を行った結果、平成31年度・令和元年度に、不払だった割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめ公表した。
是正企業数は1,611企業(前年度比 157企業の減)という結果となった。うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、161企業(前年度比 67企業の減)、対象労働者数は7万8,717人(同3万9,963人の減)である。
また、支払われた割増賃金合計額は98億4,068万円(同26億815万円の減)であり、平均額は、1企業当たり611万円、労働者1人当たり13万円となった。
外国人技能実習生の実習実施者に対する平成31年・令和元年の監督指導、送検等の状況を公表
厚生労働省は10月9日(金)、全国の労働局や労働基準監督署が、平成31年・令和元年に外国人技能実習生(以下「技能実習生」)の実習実施者(技能実習生が在籍している事業場)に対して行った監督指導や送検等の状況について取りまとめ、公表した。
労働基準関係法令違反が認められた実習実施者は、監督指導を実施した9,455事業場(実習実施者)のうち6,796事業場(71.9%)であった。また、主な違反事項は、労働時間(21.5%)、使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準(20.9%)、割増賃金の支払(16.3%)の順である。さらに、重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは34件である。
全国の労働局や労働基準監督署は、監理団体および実習実施者に対し、労働基準関係法令などの周知・啓発に努めるとともに、労働基準関係法令などの周知・啓発に努めるとともに、労働基準関係法令違反の疑いがある実習実施者に対しては監督指導を実施し、引き続き、技能実習生の適正な労働条件と安全衛生の確保に重点的に取り組んでいくとしている。
自動車運転者を使用する事業場に対する平成31年・令和元年の監督指導、送検等の状況を公表
厚生労働省は10月9日(金)、全国の労働局や労働基準監督署が、平成31年・令和元年にトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導や送検等の状況について取りまとめ、公表した。
監督指導を実施した事業場は4,283事業場のうち労働基準関係法令違反が認められたのは、3,538事業場(82.6%)、改善基準告示※違反が認められたのは、2,386事業場(55.7%)であった。また、主な労働基準関係法令違反事項は、労働時間(51.3%)、割増賃金の支払(23.8%)、休日(4.1%)となり、主な改善基準告示違反事項は、最大拘束時間(40.3%)、総拘束時間(34.5%)、休息期間(28.1%)である。さらに、重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは46件となった。
厚生労働省では、引き続き、自動車運転者を使用する事業場に対し、労働基準関係法令などの周知・啓発に努め、労働基準関係法令違反の疑いがある事業場に対しては監督指導を実施するなど、自動車運転者の適正な労働条件の確保に取り組んでいくとしている。
※「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)(別紙2参照)。
「過重労働解消相談ダイヤル」の実施
厚生労働省は10月20日、都道府県労働局職員による無料電話相談「過重労働解消相談ダイヤル」を11月1日より実施することを公表した。
これは、長時間労働や賃金不払残業の解消に向けた取組である「過重労働解消キャンペーン」の一環として行うものである。過重労働をはじめとした労働問題全般にわたる相談を受け付けており、労働基準法や関係法令の規定・考え方の説明や、相談者の意向を踏まえた管轄の労働基準監督署への情報提供、関係機関の紹介など相談内容に合わせた対応を行うとしている。
12月7日に公表された相談結果によると、合計で162件の相談が寄せられた。相談内容としては、「長時間労働・過重労働」に関するものが30件(18.5%)と一番多く、次いで「賃金不払残業」が26件(16.0%)となった。
厚生労働省は、これらの相談のうち、労働基準関係法令上、問題があると認められる事案については、相談者の希望を確認した上で労働基準監督署に情報提供を行い、監督指導を実施するなど、必要な対応を行うとしている。
「今後の若年者雇用に関する研究会報告書」の公表
厚生労働省は10月23日、「今後の若年者雇用に関する研究会報告書~コロナ禍を受けて社会・産業構造が変化する中での若年者雇用の当面の在り方について~」を取りまとめ公表した。
報告書では、「若者雇用促進法に基づく各仕組みの効果的改善による適職選択支援」をはじめ、「新規学卒者の定着支援」、「キャリア自律に向けた支援」、「若年者雇用の安定化に向けた支援」などについて有識者の意見をまとめたほか、コロナ禍で社会・産業構造等の変化の更なる加速が予想されることなど、今後、中長期的に新型コロナウイルス感染症が若年者雇用にどのような影響を及ぼすかについても現時点で考えられる課題や留意点を盛り込んでいる。
今後は本報告書も踏まえつつ、労働政策審議会人材開発分科会において新たな青少年雇用対策基本方針の策定に向けた議論を行っていくとしている。
「令和2年版厚生労働白書」
厚生労働省は10月23日、「令和2年版厚生労働白書」(平成30年度および令和元年度厚生労働行政年次報告)を公表した。
令和2年版厚生労働白書は2部構成となっており、例年異なるテーマでまとめられている第1部では、「令和時代の社会保障と働き方を考える」と題し、平成の30年間を振り返りつつ、高齢化がピークを迎える2040年頃を見据えて、「人生100年時代」、「担い手不足・人口減少」「新たなつながり・支え合い」「生活を支える社会保障制度の維持・発展」という4つの方向性に沿った対応の必要性を提示するものとなっている。
第2部では、「現下の政策課題への対応」と題し、子育て、雇用、年金、医療・介護など、厚生労働行政の各分野について、最近の施策の動きをまとめている。
新卒者等の採用維持・促進に向けて、経済団体に対し協力要請を実施
厚生労働省は10月27日、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年3月以降の企業説明の延期・中止や一部の企業による採用選考活動の取りやめなど学生の就職活動への影響が生じていることから、日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、全国商工会連合会に対し、新卒者等の採用維持・促進に向けた配慮について要請した。
要請内容には、新卒者用への就職支援の強化、大学等を通じた就職支援の強化、新卒者等と採用意欲のある中小企業とのマッチング促進、東京等の若者人材の移転支援等が盛り込まれている。
「イクメン企業アワード2020」・「イクボスアワード2020」の受賞企業・受賞者を決定
厚生労働省は10月28日、「イクメン企業アワード2020」の受賞企業と「イクボスアワード2020」の受賞者を公表した。
今年で8回目を迎える「イクメン企業アワード」は、男性従業員の育児と仕事の両立を推進し、業務改善を図る企業を表彰するもので、今回は36社の応募の中から、グランプリ2社、奨励賞1社、理解促進賞1社、特別賞2社を選定した。
また、今回が7回目となる「イクボスアワード」は、部下の仕事と育児の両立を支援する管理職=「イクボス」を企業からの推薦によって募集し、表彰するもので、今回は48人の応募の中から、グランプリ2人、奨励賞1人を選定した。
「令和2年版 過労死等防止対策白書」
厚生労働省は10月30日、過労死等防止対策推進法に基づき、「令和元年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」(令和2年版過労死等防止対策白書)を公表した。「過労死等防止対策白書」は、過労死等防止対策推進法の第6条に基づき、国会に毎年報告を行う年次報告書で、5回目の公表となる。
白書の中では、①週60時間以上の勤務をしている雇用者は374万人(前年比23万人減少)、②年次有給休暇の取得率が2年連続5割超、③メンタルヘルス対策の取組、仕事上のストレス等について職場に相談先がある労働者の割合、ストレスチェックの集団分析結果の活用状況はいずれも前年に比べて改善、④過労死の認定件数(脳・心臓疾患、精神障害)は横ばい傾向など、過労死の現状や過労死の背景について分析を行い、働き方の改善や職場環境の改善を目指している。
厚生労働省では、「過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会」の実現に向け、引き続き過労死等防止対策に取り組んでいくとしている。
11月はテレワーク月間
総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省(以下、「テレワーク推進4省」)と産業界、学識者の産官学で構成される「テレワーク推進フォーラム」では、11月を「テレワーク月間」とし、テレワークの活用によって働き方の多様性を広げる運動を行う。
厚生労働省では、今年で6年目となるテレワーク月間中に、テレワークの導入を促進するための企業向けセミナーをオンライン形式で実施する。
厚生労働省ではこの月間を通じて、今後もテレワーク導入・運用促進のための周知・支援を行っていくとしている。
旧労働契約法第20条に関する最高裁判決に対する談話<連合>
連合は10月16日、旧労働契約法20条における最高裁判決を受けて、事務局長談話を発表した。
事務局長談話によると、「日本郵便事件においては、是正を求めた各種手当および休暇制度について『不合理である』との判断を下した。一方、大阪医科薬科大学事件およびメトロコマース事件について、均衡考慮がなされなかったことは残念であり、格差是正のためには、賞与・退職金も均等・均衡を考慮すべきである」とし、「働く現場においては、パート・有期雇用の仲間が基幹的役割を果たし、責任ある仕事を任されていることも多く、組織化・労使交渉を通じ、基本給・賞与等も含めた待遇の改善、格差の是正に全力で取り組んでいく」と述べた。
郵政労契法20条裁判最高裁判決に対する談話<全労連>
全労連は10月16日、旧労働契約法20条における最高裁判決を受けて、事務局長談話を発表した。
事務局長談話によると、「日本郵便事件において、手当及び休暇制度の格差を違法と最高裁が判断したことは、郵政に働く18万人の非正規雇用労働者だけでなく、2,100万人と言われている非正規で働くすべての労働者の均等待遇実現への大きな一歩を記したものである。郵政ユニオンの仲間の勝利に心から敬意を表するとともに、運動の大きな成果を全国の仲間とともに喜びあいたい」と述べた。一方、13日に出された大阪医科大の判決については、「夏期・年末手当(夏期・年末賞与)の支給格差を不合理な格差ではないとした東京・大阪高裁の判決を是正しなかった。基本賃金、賞与、退職金といった、雇用形態別の格差が最も大きな待遇については、使用者側の恣意的な言い訳を全面的に認め、下級審で一部採用された前進的な判断も破棄した。これは許しがたいことである。同時に現在の同一労賃法制の欠陥を示したものでもある。さらなる運動で、打開したい」と述べた。
「2021年度入社対象新卒採用に関するアンケート結果」を公表<経団連>
経団連は9月15日、「2021年度入社対象新卒採用に関するアンケート」の集計結果を公表した。
新型コロナウイルス感染症拡大が、新卒採用活動に及ぼした影響と課題、対応状況を把握する目的で実施されたものであり、442社から回答があった(回答率30.5%)。
アンケート結果によると、今年度の採用活動は、概ね非対面による形式で行われた。広報活動では、対面型での説明会等が約9割中止され、WEBサイト上での企業説明会や、企業・事業所紹介映像の公開などが実施された。選考活動でも9割を超える企業がWEB面接を実施し、なかでも6割強の企業が最終面接も含めてすべてWEBで行ったことがわかった。
採用活動にWEBを活用するメリットとしては、遠方の学生に対するアプローチがしやすいことを挙げる企業が圧倒的に多かった。
課題としては、広報活動では、学生の理解が深まっているかどうかなどがわかりにくい点を挙げる企業が多かった。また、選考活動では、学生の熱意や表情等を把握しにくいなどの懸念に加えて、通信環境の必要性を指摘する意見が多かった。