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ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」の取組み 東京都港区海岸1-10-45 アトレ竹芝シアター棟1F

「目以外のなにかでものを見たことがありますか?」と問いかけられたら、皆様はなんと答えますでしょうか。ダイアログ・イン・ザ・ダークは漆黒の暗闇の中を、視覚障害者に案内され、参加者は視覚以外の感覚をフルに研ぎ澄まし、チームとなった人々と対話(ダイアログ)をしながらダイバーシティを体感できるプログラムです。このプログラムが体験できるダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」(外部サイト)を運営されているダイアローグ・ジャパン・ソサエティ(外部サイト)の理事、志村真介さんに取組みについてお話しをお伺いしました。

東京2020大会のレガシーを繋ぐ

ダイアログ・イン・ザ・ダークは、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケによって1988年に発案されました。日本では1999年から行っています。始めは短期のイベントで1年に1度、1週間程度開催して、体験者は500~1000人程度でしたが、10年続けるうちに、3か月で1万人程度体験いただくような規模になり、チケットはすぐに完売という状態でした。

ダイアログ・イン・ザ・ダークは視覚障害者が見える人をアテンドします。ただ、期間限定開催の場合、プロジェクト企画中いきいきと働いている視覚障害者は、プロジェクトが終わると社会的弱者に戻ってしまうのです。ヨーロッパでは障害のある人も社会参加できる仕組みが当たり前で、ダイアログの常設展もあります。そこで、日本でも期間限定ではなく常設展を作ろうと決めました。

しかし、多くの障害者が働くということについていろいろな条件が付加され、物件がなかなか見つからないなど、オープンまでには様々な困難がありました。2009年に外苑前に物件がようやく見つかり、常設でプログラムを体験してもらえるようになりました。のちに、東京2020大会が決定し、基本コンセプトの1つが「ダイバーシティ&インクルージョン」でした。そのオリンピックレガシーを繋いでいける環境を作りたいと思い、2020年8月に、ここ竹芝にも常設展をオープンするに至りました。

企業研修や学校教育の場と利用される施設に

プログラムは、①一般向け、②企業向け、③子供向けがあります。一般向けは、季節などに合わせたプログラムを展開し、ソーシャルエンターテイメントとして楽しみながらダイバーシティを実感していただけます。企業向けは各企業の課題に応じて、チームビルディング、コミュニケーション、ダイバーシティなどのテーマで研修の場として利用されています(ダイアログ・ビジネス(外部サイト))。
例を挙げると、航空会社の地上スタッフ・機内クルー・電話対応スタッフなど、普段、働く場所や仕事内容も違う方たちが体験されました。「見えない中で、お互いの位置や何をしているかを確認することの必要性と、コミュニケーションの重要性を実感した。」という感想をいただいています。このような気付きはイノベーションやリーダーシップの向上にもつながっていくはずです。

今、世の中全体がSDGsと言っていますが、言葉が先行して何をしてよいかわからないといった企業や、M&Aなどで新しい文化が混在する企業など、それぞれの課題解決に向けて、カスタマイズしたプログラムを提供しています。暗闇の中では、肩書もなくなり、「見えない」ということにおいて全ての人が対等となります。その中でコミュニケーションを取り、合意形成を図っていくプロセスの中で、人間関係の再構築ができ、ストレスも軽減され、多くの気づきがあります。会社への帰属意識も高まったという効果もあると聞いています。

子供向けは、海外では学校教育の一環として小学校4年生ぐらいになると60%くらいがダイアログ体験をしますが、日本では自分たちが20年ほどやってきた中で、子供の参加率は3%程度です。アンコンシャスバイアスや排他意識が芽生える前に遊びながら自由な対話を体験することは重要だと思い、クラウドファンディングで5,000人の子供に無料で体験をしてもらう取組みを行っています。
対話の森 こども5000人体験プロジェクト(外部サイト)

障害者の社会参加と対話の重要性

今の私たちの社会には、世代間、障害の有無、性別など見えない透明な壁がたくさんあります。日本人は、障害者を自分とは関係ない、向こう岸の人として捉えがちなのですが、実は、同じ岸にいて身近な存在だという気づきが必要です。プログラムを進行するのは、視覚障害者のアテンドです。視覚障害者は普段、見えている人たちに対して「ありがとう」「すみません」と言うことが多く、「見えている人たちは凄い」と思っていたのですが、暗闇の中では逆転します。視覚障害者たちは、視覚以外の感覚が非常に優れていて無限大の可能性を秘めているのです。

アテンドにはお客様の安全な誘導とともに、エンターテイメント性が求められます。アテンドになるためには、姿勢や声の出し方・ボイストレーニング、お客様への接し方だけでなく、ダイアログの概念などを学ぶ研修を受けます。そのためのアテンドスクール(外部サイト)があります。その後、先輩アテンドについて学び、デモンストレーションで様々なチェックを受けてやっとデビューできます。デビューできるまでに大体6か月から1年かかります。アテンドはお客様から「ありがとう」と言われることで、自己肯定感が強くなり、どんどん良いパフォーマンスを見せるようになっていきます。

「見えない」、「聞こえない」、「年を取る」ということは非常にネガティブに思われがちなのですが、見えないからこそ見えるもの、聞こえないからこそ聴こえるもの、年を取っているからこそ伝えられることがたくさんあります。ここ、「対話の森」では、ダイアログ・イン・ザ・ダークのほかに、「静けさの中の対話」ダイアログ・イン・サイレンス、「生き方の対話」ダイアログ・ウィズ・タイムなどのプログラムも開催しています。

発案者の、アンドレアス・ハイネッケは「戦争の反対語は、単に平和ではなく、対等な対話を続ける努力をしていくことだ」と言っています。こういう時代だからこそ、観光関連事業者の皆様も是非、いろいろな形の対話を体験し、アクセシブル・ツーリズムの推進に向けた取組みに役立ててみてはいかがでしょうか。

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