新たな人力車で浅草の街をご案内。コロナ禍でも楽しめるオンライン人力車をスタート。

公開日:2020/10/30

新たな人力車で浅草の街をご案内。コロナ禍でも楽しめるオンライン人力車をスタート。

三浦翔平氏の職業は、人力車で浅草を案内する俥夫。一度は職を離れたが、コロナをきっかけに「浅草に恩返しがしたい」という思いが強くなり、オンライン人力車(人力車にカメラを取り付け浅草を案内する)というアイデアと共に復帰。現在は「福ろう屋」(東京都台東区)の屋号のもと、オンライン事業部を立ち上げて活動中。

きっかけはオンライン飲み会。

俥夫の仕事を離れ、建設業界で働いていた三浦氏だが、コロナの影響で仕事はほぼゼロになった。新しいサービスを思いついたきっかけは、友人とのオンライン飲み会。もともと、チャンスがあれば何らかの形で人力車の仕事に戻りたいと考えていたので、「このカメラを人力車に付ければ世界中の人を笑顔にできる」と思ったという。

新たな人力車で浅草の街をご案内。コロナ禍でも楽しめるオンライン人力車をスタート。 きっかけはオンライン飲み会。

オンライン用のルートや演出など、新サービスならではのコンテンツを考案。

雷門前から俥夫の姿が消えた4月、緊急事態宣言が発令される中でサービスはスタートした。まずは知人に利用してもらい、その感想を元に改善を進めた。例えば、ルート。通常の人力車であれば、下町の風情が感じられる裏路地も好評だが、オンラインでは雰囲気が伝わらないことが判明。そこで、雷門やスカイツリー、浅草神社といったインパクトのある名所を回るルートに変更した。演出面でも、画面のフレームアウト、インを利用して歌舞伎のお面を被ることで特別感を演出するなど、オンラインならではのアイデアを100個以上ノートに書き出し、良いものを取り入れていった。

新たな人力車で浅草の街をご案内。コロナ禍でも楽しめるオンライン人力車をスタート。 オンライン用のルートや演出など、新サービスならではのコンテンツを考案。

有料化に向け、一般客を対象にサービスを開始。

6月1日より、一般客を対象にサービスをスタート。一人でも多くの方に利用してもらえるように、8月末まで料金を無料にした。6月・7月の利用者数は、各月200名弱で、これはこれで順調な数字だったが、8月に入ると状況が一変。「誰も乗ってない人力車に全力で話しかけてる人がいる」という巷でのSNSへの投稿や、テレビ取材の放送が話題となり、わずか2日間で700名の予約が殺到。真夏の暑い時期、人数を制限することも考えたが、有料化する9月に向けて少しでも認知度を高めたいと、1日6便、毎日のように走った。

新たな人力車で浅草の街をご案内。コロナ禍でも楽しめるオンライン人力車をスタート。 有料化に向け、一般客を対象にサービスを開始。

ファミリーや浅草在住など、オンラインを通じて新たな客層を発見。

三浦氏が「俥夫人生で一番大変だった。」と振り返る8月。それでも「本当に浅草に行った気分になり、想像以上に楽しかった。」とう利用客の声は大きな励みになったという。コロナ渦で外出できなかった家族連れなど新しい客層も増えた。「お客様が映る画面に4人兄弟がちょこんと座ってたことがあって、それはすごく印象に残ってます。」と話す。他にも、浅草在住だが、人力車に乗っている姿を知り合いに見られるのが恥ずかしくて利用したことがなかった、というお客さんも。また、海外からの需要も想像以上に多かったという。

新たな人力車で浅草の街をご案内。コロナ禍でも楽しめるオンライン人力車をスタート。 ファミリーや浅草在住など、オンラインを通じて新たな客層を発見。

初期費用は数万円。売上は約1.8倍。

有料化した9月以降、オンライン人力車の運行は、1日2便を週3日にとどめている。昼間の時間帯を新しいサービスを生み出す時間に充てるためだ。運行数は少ないが、1日あたりの売上はコロナ禍前の約1.8倍。1度に多くのお客さんを乗せて効率よく利益を上げられるのは、オンラインならではだ。さらに、初期費用はほとんどかかっていない。自前のパソコンを使用し、1台100万円以上する人力車は、籍を置く「福ろう屋」で借りている。撮影機材も、最近になって3万円のカメラと2万円のピンマイクを導入したが、開始当初はスマホで撮影していた。ECサイトも、詳しい知人に教わりながら自作。「費用のことだけを言えば誰でも始められます」と話す。

新たな人力車で浅草の街をご案内。コロナ禍でも楽しめるオンライン人力車をスタート。 初期費用は数万円。売上は約1.8倍。

他事業と連携した新たなサービスや仕組みも構築。いずれは地方創成に貢献したい。

オンライン乗車された方を対象に、浅草のお寺でオフ会を開催したり、乗車中に紹介したお店の商品をECサイトで購入できる仕組みを構築するなど新しい試みも始まっている。外国人客が乗車する便には、現在は英語が話せる知人にボランティアで通訳をお願いしているが、いずれは給与を支払える体制にするつもりだ。三浦氏はこれまでに浅草で得たノウハウを活用すれば、オンライン人力車で地方創成に貢献できると確信している。お客さんが街を知り、SNSで発信し、それが世の中に広まることで、経済が回っていくことを浅草で実感したからだ。
最後に「浅草に恩返しをしてから」と前置きした上で「いずれは日本中のいろんな街でオンライン人力車をやりたいですね。」と語った。

新たな人力車で浅草の街をご案内。コロナ禍でも楽しめるオンライン人力車をスタート。 他事業と連携した新たなサービスや仕組みも構築。いずれは地方創成に貢献したい。