有名ホテルの日本庭園で、オンライン森林浴。インバウンド向けバーチャルツアーを開催!

公開日:2022/12/27

有名ホテルの日本庭園で、オンライン森林浴。インバウンド向けバーチャルツアーを開催!

森林浴をメインとしたウェルネスツアーを企画販売する、特定非営利活動法人(NPO法人)itswellness(東京都中央区)。2020年2月に旅行業を立ち上げた直後にコロナ禍に突入。新しい第一歩を踏み出したにもかかわらず、立ち止まらざるを得ない状況となってしまう。その中で同社がスタートしたのが、オンラインでのバーチャルツアー。コロナ禍で日本を訪れたくても訪れることのできない外国人旅行者に“東京の今”を届けてきたのだ。今回はその取り組みの裏側と、企画した中でも進取的な森林浴のバーチャルツアーについて、代表理事・トラベルコーディネーターの木村由加子氏と戦略企画担当の村井賢志氏に話を伺った。

森林浴に特化したツアーを企画立案する、NPO法人の旅行会社としてスタートするも…

森林浴は1980年代に日本で発祥した健康増進法。現在は世界中で親しまれており、多くの人が精神的な癒しや健康のために、森での散策やレクリエーションを行っている。そんな森林浴にItswellnessが注目した理由を、代表理事の木村氏に伺った。「私は以前、がん患者さんをサポートする活動をしていたのですが、その活動の中で、緑が人間に対していい影響を与えてくれることを知りました。人々の身近にある自然の癒しを、闘病中の方だけでなく、疲れをためている忙しいビジネスパーソンや育ち盛りのお子さんなどに届けられないか──と考え、2018年に『人と地球が健康になれる旅』をコンセプトに、ウエルネスツアーの企画をスタートしました」。約3年をかけて本格始動に向けた準備をしながら、2020年2月に旅行業に必要な資格を取得。しかし、タイミングを同じくしてコロナ禍に突入してしまう。「当時は夏のツアー開催に向けて、ホテルやバス会社の担当者さんと話を進めている真っ最中でした。“もしかしたら開催できるかも?”と一縷の望みを託していたのですが、緊急事態宣言が出されるなど状況は悪化。ゴールデンウィークの頃にやむなく中止を決めました」と木村氏は振り返る。

有名ホテルの日本庭園で、オンライン森林浴。インバウンド向けバーチャルツアーを開催! 森林浴に特化したツアーを企画立案する、NPO法人の旅行会社としてスタートするも…

まずは国内向けからスタートし、動画配信に必要なノウハウを蓄積

「コロナ禍でもできることはないか模索する中で知ったのが、オンラインツアーの存在。いち早く始めていた地方のバス会社の事例を参考に、私たちも挑戦することにしました。もともとインバウンドのお客様も視野にいれた事業計画を立てていたため、当初は海外に向けたオンラインツアーのプランニングを検討していました。しかし、インバウンド向けとなると、映像の撮影と配信、トーク、通訳を同時に行わなければならず、想像以上にハードルが高かったんです。そこでまずは2021年3月、国内向けに伊豆大島や都内の森林浴スポット、観光名所を巡る配信を開始。回を重ねながらノウハウを蓄えていきました」と木村氏。そして2021年7月24日、ついに英語での配信をスタートさせる。「アメリカ向けバーチャルツアーとして、築地、浜離宮、芝東照宮、増上寺などからライブ配信。さらに秋以降は日本橋、銀座などの百貨店、劇場等にもご協力いただき、都心の屋上庭園でも森林浴を実施。海外の視聴者からの質問に答えたり、街に関するクイズを出題したりしながら、60分の英語ライブツアーを実施しました。参加してくださった方の多くは、日本好きな外国の方ばかり。銀座の街並みを見て『なつかしい』『東京に行きたい』といったコメントで、チャット欄はいっぱいになりました」と戦略企画担当で、自らもツアーを造成する村井氏は教えてくれた。

有名ホテルの日本庭園で、オンライン森林浴。インバウンド向けバーチャルツアーを開催! まずは国内向けからスタートし、動画配信に必要なノウハウを蓄積

ホテルの日本庭園を舞台にバーチャルツアーを実施!アメリカを中心に約100名が参加

「英語でのライブ配信を始めた頃に、日本庭園を雲海やオーロラで彩るなど独自の取り組みをしている、都内の由緒ある有名ホテルに、インバウンド向けの森林浴バーチャルツアーを提案しました。当初は2021年12月の紅葉シーズンに開催する予定だったのですが、冬の感染拡大期間が長引いたため、2022年5月にようやく開催することができました」と木村さんは語る。「アメリカ西海岸での視聴を照準に、日本時間13時にツアーを設定。ガイドは、“東京最後の野生児”と称される森の演出家・土屋一昭さんにお願いしました。日本庭園内にある森林浴スポットや、滝のそばでのマイナスイオン効果の紹介、庭に植えられた椿の樹をきっかけに広がる生の椿油(カメリアオイル)の話題など、土屋さんならではの、森林浴の視点を介したガイディングは、一般的な庭園紹介とひと味違っていたため大好評!『東京の真ん中にこんなに素晴らしい庭園があるなんて!』と視聴者の皆さんは驚かれていました。参加者はアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、中国などから約100名に及び、海外における日本庭園への評価の高さを実感しました」と、村井氏は配信当日の様子を振り返る。

有名ホテルの日本庭園で、オンライン森林浴。インバウンド向けバーチャルツアーを開催! ホテルの日本庭園を舞台にバーチャルツアーを実施!アメリカを中心に約100名が参加

今秋、念願の森林浴リアルツアーをスタート!

コロナ禍の試みとして、インバウンド向けのバーチャルツアーのみならず、アメリカのパートナー企業や現地ガイドの協力を得て、海外旅行に出かけたい日本人向けのオンラインツアーの配信なども行ってきた同社。バーチャルツアーを検討している同業他社に向けたアドバイスをいただいた。「私たちが、オンラインツアーのノウハウがほぼゼロの状態からスタートして目標を実現できたのは、各分野の専門家を集めてチームをつくったからだと思います。人を探し、自分たちの想いを伝え、理解しあうところから始まるので時間はかかりますが、このほうが、自前で行うよりクオリティが高くなりますし、長期にわたって実施しつづけていく仕組みができると思います」と木村氏。コロナ禍での辛抱の時期を乗り越え、今秋、同社はついにリアルツアーを実現。「旅行業の立ち上げから今まで、本当に計画通りにいかない苦しい時期でしたが、これからの準備に必要な時間だったのだと、いまは前向きに捉えています。第一弾は、都内及び、奥多摩や伊豆大島などでの森林浴ツアーを実施。森林浴の知識を有するガイドさんと一緒に森や都市公園を散策することで、参加者の皆さんに、ふだんなかなか気づけない森(自然)の豊かさを伝え、リフレッシュしていただこうと考えています」と木村氏は語る。コロナ禍の2年半、オンラインツアーの配信を通じて、日本での森林浴の魅力を国内外に伝えてきた木村氏、村井氏とitswellnessのメンバーたち。彼らの撒いてきた種が大輪の花を咲かせる日も近いだろう。

有名ホテルの日本庭園で、オンライン森林浴。インバウンド向けバーチャルツアーを開催! 今秋、念願の森林浴リアルツアーをスタート!