フィンランドスタイルをカフェでもお家でも。Instagramで新しいニーズを創出。

公開日:2020/10/30

フィンランドスタイルをカフェでもお家でも。Instagramで新しいニーズを創出。

2019年4月にオープンした「Robert's Coffee 千歳烏山店」(東京都世田谷区)。世界有数のコーヒー愛好国であるフィンランドで最大規模を誇るコーヒーチェーンの都内初店舗である。人気の住宅地・千歳烏山にある同店は、ゆったりと寛げる空間を提供し、着実に顧客を増やしていた。開店から一周年を迎える頃、順風満帆だった彼らを襲ったのは、新型コロナウイルスという未曾有の大混乱。「今までの生活が一変した」多くの人々がそう語る時、ロバーツコーヒーが打ち出した新たな戦略とは。

オープン1周年に待ち受けていたのは緊急事態宣言という未曽有の危機

3月頃から街の雰囲気が変わり始め、4月に緊急事態宣言が発令され、お客様の数と売上は半分に激減。それでもオフィス街とは違い、住宅が多くを占める千歳烏山という立地のおかげもあり、店に足を運んでくれるお客様も少なからずいたのが不幸中の幸いだった。しかし、50%の売上減少は決して楽観視できない。早急に今後に向けた戦略を練り直す必要があった。

フィンランドスタイルをカフェでもお家でも。Instagramで新しいニーズを創出。 オープン1周年に待ち受けていたのは緊急事態宣言という未曽有の危機

利用客が安心できる徹底した感染症対策。そして、SNSを活用した新たな顧客層の開拓へ

スタッフの体温測定やマスク着用、飛沫防止フィルム、アルコール消毒液の設置、換気、座席の間引きなど、お客様が安心して過ごせる設備環境は次々に導入したが、これだけでコロナ禍以前の売り上げに戻すのは難しいことはわかっていた。そこで生まれたアイディアが「SNS」の活用。以前より情報発信ツールとして利用していた「Instagram」のショップ機能と連携できるシステムに目をつけたのだ。主な商品であるフィンランド本社で焙煎したコーヒー豆や本国のレシピを忠実に再現した人気メニューの冷凍シナモンロールなどの写真撮影は店舗で行い、サイト運用は長野の本社が行うことで社内の体制もうまく整えた。しかし、以前からコーヒー豆の店頭販売は行っていたものの、来店されたお客様が買って帰ることはほとんど無く、正直、最初は不安のほうが大きかった。

フィンランドスタイルをカフェでもお家でも。Instagramで新しいニーズを創出。 利用客が安心できる徹底した感染症対策。そして、SNSを活用した新たな顧客層の開拓へ

「飲食店」として。そして「小売店」として。2つの顔が新たな武器に

しかし、そんな不安をよそに、Instagram経由で商品を購入されるお客様が増え始めた。しかも購入者のうち半分はまったくの新規顧客。「フィンランドで食べた味が恋しくて」そんな理由から、シナモンロールを購入するお客様もいた。
「今までは来店されたお客様にコーヒー豆や冷凍シナモンロールを買っていただくことを考えていましたが、来店されるお客様は近隣に住んでいる方が多く、私たちの商品を楽しみたい時には店に訪れることができる。一方、通販を利用されるお客様は、主に距離的な問題などから店舗に来られない方。ターゲットが全く別だったことに気付きました。」と、同社の経営戦略室の小林氏は語る。「飲食店」として対面するお客様に最善の環境を用意してきた自負はあったが、非対面の「小売店」としては最善の環境を充分に構築できていなかったのだ。それが今回のコロナ禍によるInstagramを活用した販売サービスの構築で、新たな武器を得ることに成功した。

フィンランドスタイルをカフェでもお家でも。Instagramで新しいニーズを創出。 「飲食店」として。そして「小売店」として。2つの顔が新たな武器に

自らを見つめ直し、可能性を試す。新たなビジネスチャンスも

Instagramでの情報発信は決して目新しいことではないし、それを活用したECサイトの立ち上げも専門的な知識は必要ない。しかし、世の中のすべての事業者がその可能性を試しているだろうか。
「特別なことはしていませんが、まずは実際にやってみること。その中で新しい需要・ターゲットが浮かび上がってくることもある。」と小林氏は言う。
なによりこの事例で魅力的なのは、容易に挑戦できること。大規模な資金調達は必要なく、スマートフォン1台あれば、すぐに実行可能。これは多くの事業者にとって価値あるモデルケースとなるはずだ。

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危機への直面は新たな価値と武器を手に入れた転換期

売上の減少分を補填し、さらに上乗せするためには、コロナ禍以前にはなかった新たな戦略が必要になってくるが、Instagramの活用から大きな可能性を感じたことで、道は拓けた。地域密着の「飲食店」と、全国展開の「小売店」。この2つの顔を武器に、コロナ禍の荒波を乗り切っていくつもりだ。
部屋で淹れるコーヒー、焼き上げたシナモンロールの香りが創り上げる自宅のリビングルームも、新しい生活様式の中で生まれたカフェの過ごし方なのかも知れない。

フィンランドスタイルをカフェでもお家でも。Instagramで新しいニーズを創出。 危機への直面は新たな価値と武器を手に入れた転換期