五反田にある6つの飲食店が手を取り合って始めた、宅配料無料のデリバリーサービス「五反田イーツ」。

公開日:2020/12/4

五反田にある6つの飲食店が手を取り合って始めた、宅配料無料のデリバリーサービス「五反田イーツ」。

「五反田イーツ」は、宅配を自社スタッフが行うことで宅配料無料を実現した新しいデリバリーサービスだ(オーダー1品につき支援金100円の支払いあり)。主体は、日本一ともいわれる大学のフードコートを運営することでも知られている「東京食堂」の運営会社オリエンタルフーズ(東京都品川区)。「食×□□□で新たな価値提供を目指す」「食を通して地域とつながる」をアイデンティティとし、今、飲食業界で注目の企業だ。

緊急事態宣言が迫るもお店は大盛況。一転、自粛を決断。

小中学校が臨時休校に入り、街の人通りもまばらになった3月、アルバイトに経営体験をさせる取組がテレビで取りあげられたこともあり、「東京食堂」は多くの来店客でにぎわっていた。緊急事態宣言の発令が噂される中、多くの来店をありがたく感じる一方で、素直に喜べない気持ちが強くなっていった。そして、4月1日、店舗営業の自粛に踏み切った。

五反田にある6つの飲食店が手を取り合って始めた、宅配料無料のデリバリーサービス「五反田イーツ」。 緊急事態宣言が迫るもお店は大盛況。一転、自粛を決断。

小さいお店が多い五反田で「自分たちが先頭に立てたら」と考えていた。

お店を閉めた後、テイクアウトを始めたが、デリバリーには二の足を踏んでいた。既存のデリバリーサービスが、中小規模の自社に合わないと感じていたからだ。まわりの小さいお店を見てもデリバリーを始めているところは少なかった。そんな中、都内各地で広まりつつあったデリバリーサービスを運営する会社から、「オリエンタルフーズさんが中心になって、私たちの仕組みを活用しませんか。」と声がかかった。ちょうど、近隣の小さなお店が店頭でテイクアウトを一生懸命やっている姿を目の当たりにして「何かできないか」と考えていた。「迷わず参画を決意しました。」と、オリエンタルフーズの代表取締役社長である米田氏は振り返る。

五反田にある6つの飲食店が手を取り合って始めた、宅配料無料のデリバリーサービス「五反田イーツ」。 小さいお店が多い五反田で「自分たちが先頭に立てたら」と考えていた。

オリジナルの「五反田イーツ」をスタート。

当初は、デリバリーサービスの運営会社から提供されたサイトやシステムを運用していたが、しばらくして「もっと自分たちに合った仕組みにしたい」と考えるようになった。そして8月6日、前出の運営会社の了承を得た上で、オリジナルの「五反田イーツ」をスタート。予約サイトを新たに構築し、複数店舗のメニューを同時に頼めるようにしたり、各店の看板メニューをアレンジした特別感のあるメニューを開発するなど、サイトやシステムを改良した。中でも一番の改良点は、デリバリーを自分たちで行うようにしたことだ。キッチンスタッフやホールスタッフがそのまま自転車で料理を運ぶことにより配送料の無料化を実現したのだ。事前にSNSやチラシで宣伝を行っていたこともあり、売上は2倍になったという。費用に関しては、新しいシステムの構築や広告宣伝費に「小規模事業持続化補助」を、配達に使う自転車の購入代金に「事業転換に関する助成金」を充てることで経費負担を最小限に抑えることができた。

五反田にある6つの飲食店が手を取り合って始めた、宅配料無料のデリバリーサービス「五反田イーツ」。 オリジナルの「五反田イーツ」をスタート。

近隣店舗と連携できたことが一番の収穫。

「五反田イーツ」が宣伝ツールとしての機能も果たし、9月・10月は実店舗の売上も回復傾向にあった。しかし、同サービスを始めて良かったと思う一番の理由は、近隣店舗との繋がりができたことだ。当初は、何をすればいいかわからず途方にくれていたり、受けられるはずの融資や助成金を知らないお店が多かったことから、「今後の課題」「マーケティング情報」「助成金について」を動画にまとめて配信したこともある。反対に、他店から「ECサイトで物販を始めたらけっこう売れたよ。」「GoToイートの反応いいよ。」といった様々な情報を得られることは大きなメリットで、「お互いに助け合える関係を築けたことが、何よりの収穫です」と米田氏は話す。

五反田にある6つの飲食店が手を取り合って始めた、宅配料無料のデリバリーサービス「五反田イーツ」。 近隣店舗と連携できたことが一番の収穫。

小さなお店に最適な、この小さな仕組みを広めたい。

五反田イーツの強みはその柔軟性にある。例えば、オーダーが集中して配達に手がまわらなくなった場合、代わりに他のお店が配達することもできる。名前が示す通り、五反田周辺を配達エリアとし、自転車で配達しているが、過去にエリアを大きく外れた場所からオーダーが入ったこともある。その時は、バイクで通勤しているスタッフに配達してもらったことも。新しい五反田イーツは、例えば、西五反田イーツ、五反田一丁目イーツなど、極めて小さいエリアでの活用に最適だという。「小さな力が集まって大きな力になるシステム。東京に限らずいろんなところで活用してもらえたら嬉しいですね」と米田氏は締めくくった。

五反田にある6つの飲食店が手を取り合って始めた、宅配料無料のデリバリーサービス「五反田イーツ」。 小さなお店に最適な、この小さな仕組みを広めたい。