新型コロナウイルス対策をきっかけに誕生。町のPRニューコンテンツ「オンライン生まぐろツアー」

公開日:2020/12/4

新型コロナウイルス対策をきっかけに誕生。町のPRニューコンテンツ「オンライン生まぐろツアー」

2020年4月、那智勝浦町の観光地域づくりを新たに担う組織として設立された、一般社団法人那智勝浦観光機構(和歌山県那智勝浦町)。地域DMO設立準備委員会の発足後、ようやく観光機構が設立した矢先の新型コロナウイルス。予定していた観光イベントや町内行事がすべて中止となる中、実証実験として開催し、リアル誘客まで繋げることができたという「オンライン生まぐろツアー」の取組を伺った。

観光機構発足後すぐに発令された緊急事態宣言。観光産業の町から観光客の姿が消えた

ユネスコ世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の熊野エリアにあたり、紀伊半島でも有数の観光地として多くの観光客が訪れる那智勝浦町。自然が織りなす景勝地や一帯に湧出する温泉のほか、勝浦漁港では生まぐろの水揚げ日本一を誇っている。そんな観光産業で成り立つ町に、容赦なく襲い掛かった新型コロナウイルス。毎年恒例の祭りや神事、さらにはイベントなど軒並み中止または縮小を余儀なくされる事態となった。

新型コロナウイルス対策をきっかけに誕生。町のPRニューコンテンツ「オンライン生まぐろツアー」 観光機構発足後すぐに発令された緊急事態宣言。観光産業の町から観光客の姿が消えた

ひとつの打開策として、約1週間で仕立てたオンラインツアー

その頃、オンラインツアーを主催する会社から、那智勝浦町の特産品である生まぐろをテーマにzoomを使ったツアーの企画が提案された。ただし、ツアー募集までの期間は1週間で、その間に協力してもらえる地元事業者を募り、さらには関係団体に説明し了承を得る必要があった。「非常に厳しいスケジュールでしたが、新たな取組は多くの注目を集めやすいので、どこよりも早く開催することを意識しました。ただ、町全体の合意形成は難しいので、今回は利益を得るための施策ではなく、あくまで町全体の魅力をPRする“実証実験”とすることで理解を得ることができました。」と同機構マーケティングリーダー堀氏は語る。

新型コロナウイルス対策をきっかけに誕生。町のPRニューコンテンツ「オンライン生まぐろツアー」 ひとつの打開策として、約1週間で仕立てたオンラインツアー

オンラインならではのコンテンツで、参加者同士に生まれた共感の環

次に取り掛かったのがツアーコンテンツの開発だ。「生まぐろオンラインツアー」では、地元仲買人の目利きで選んだ生まぐろと地元産の醤油・塩が自宅へ届くシステムで、セット内容は①まぐろ300g+醤油・塩、②まぐろ500g+醤油・塩、③まぐろ300g+醤油・塩+現地で使えるお食事券の3種。当ツアー後の誘客も見越して開発したところ、予定していた定員の30名はすぐに埋まった。ツアーの第一部は「那智勝浦の生まぐろが美味しい秘密」「環境にやさしい生まぐろ漁」をテーマとして当地特産まぐろを紹介、第二部では地元の料理人による「美味しい刺身の切り方を伝授」の実践講座で構成された。さらに、「オンラインならではのエンターテイメント性にもこだわりたかった」という堀氏は、港からのライブ中継により美しい海と自然を紹介、加えて生まぐろの競り→解体→購入者への発送までを動画で披露した。ツアーのクライマックスにある生まぐろの実食タイムでは自らが切り身にしたまぐろに舌鼓。「醤油が美味しい!」「私は塩派!」など、zoomに多くのコメントが寄せられるなど、生まぐろの感動的な美味しさを参加者全員で共有することで大いに盛り上がりを見せた。

新型コロナウイルス対策をきっかけに誕生。町のPRニューコンテンツ「オンライン生まぐろツアー」 オンラインならではのコンテンツで、参加者同士に生まれた共感の環

分析ロジックを活用した説得力と納得感が鍵に

堀氏の予想通り、「オンライン生まぐろツアー」は関西を中心に新聞やテレビ、ラジオ、ウェブニュースなど多くのメディアに取り上げられ注目を集めた。当初1回限りの予定が、3週間後の再度開催がすぐに決定。堀氏は「先が見えない、何が正解か誰にもわからない状況だからこそスピード感はとても重要。そのためにも事前の分析とターゲット設定をしっかり行い、説得力と納得感のある企画を立て、とにかくまずはやってみることが重要」と成功の秘訣を話す。実際にターゲットのペルソナ分析では、コト消費やヒト消費志向と知的好奇心の高い首都圏在住の25~50歳の会社員に設定し、「SWOT分析」で「オンライン生まぐろツアー」の強み(STRONG)、弱み(WEAK)、機会(OPPORTUNITY)、脅威(THREAT)を整理した。主催者間で認識の共有が図れた後は、地元の観光振興に長らく携わる町役場の観光企画課が一丸となり関係各所に説明してまわった。

新型コロナウイルス対策をきっかけに誕生。町のPRニューコンテンツ「オンライン生まぐろツアー」 分析ロジックを活用した説得力と納得感が鍵に

ウィズコロナのみならずアフターコロナを見据えた新たな観光PRへと発展

「オンライン生まぐろツアー」開催後、GoToトラベルの後押しもあり実際にツアー参加者が那智勝浦町を訪れ、SNS上での多くの情報発信にも成功した。今回の取組から見出された、オンライン上でのツアーからリアル観光の誘客へとつなげる手法は、近い将来訪れるウィズコロナ、アフターコロナにおける観光PRのニューコンテンツとして注目が高まっているかもしれない。

新型コロナウイルス対策をきっかけに誕生。町のPRニューコンテンツ「オンライン生まぐろツアー」 ウィズコロナのみならずアフターコロナを見据えた新たな観光PRへと発展