3密とは無縁!茶畑につくられたティーテラス&ウエディングプランに予約殺到
公開日:2021/1/29

茶畑につくられたティーテラス=「茶の間」を貸し切り、静岡の絶景と淹れたてのお茶を楽しみながら特別な時間を過ごす―。「するが企画観光局」(静岡県静岡市葵区)が展開する、空間貸し出し型の体験プログラム「茶の間」が大きな話題を呼んでいる。サービス開始は2019年5月。コロナ禍においても右肩上がりに業績を伸ばした新たな取組について、同局のプロデューサーの鈴木氏に話を伺った。
※2021年5月現在、運営主体は「するが企画観光局」から「株式会社AOBEAT」に変わっております。
もっと自由にお茶を楽しんでもらうために、茶畑を憩いの場に
静岡の地域資源である”茶”を取り巻く環境は大きな問題を抱えていた。茶葉の消費量の減少、単価の下落、高齢化などの理由により生産者が減り、さらには耕作放棄によって茶畑も失われている。この状況に歯止めをかけるためにスタートしたのが「茶事変」プロジェクト。多くの方に自由にお茶を楽しんでもらい、“日常茶飯事”という言葉が当たり前の世の中を未来につなげたいという想いから立ち上げられたプロジェクトだ。空間貸し出し型の体験プログラム「茶の間」はその取組のひとつ。富士山と駿河湾、早朝には眼下に雲海も広がる「天空の茶の間」、突然変異で生まれた1本の黄色い新芽から栽培を拡大した「黄金の茶の間」など、異なる魅力を備えた6つの茶畑にプライベートティーテラスを設置。完全貸切予約制でゆったりとした空間でお茶を味わえるのはもちろん、写真映えする絶景が好評を博し、20~30代を中心にSNSで情報が拡散された。さらに「黄金の茶の間」が人気テレビ番組で紹介されたことにより、利用者が急激に増加したのだ。

旅の思い出となる“ティーレター”でプラスαの付加価値を
2020年に入り、「茶の間」の予約は順調に増加。3~4月の段階で約1,300人の予約が入っていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響ですべてキャンセル。新たに「茶の間」におけるコロナ対策を施す必要があった。そこで、新たに取り組んだのが、6つの「茶の間」へのティーポストの設置。茶の間を利用した来訪者が、各農家で栽培した茶葉と招待券付きポストカードの入った「ティーレター」を「茶の間を紹介したい人」にあててティーポストへ投函すると、受け取った人は利用料金が30%OFFになるという紹介者割引サービスだ。「旅先から手紙を出す」という非日常的な感覚や友人などと非接触で“つながる”ことができることが若者に受け、再開後利用者のほとんどがティーレターを投函。三密回避ができる安全安心な空間ということもあり、手紙を受け取った50名ほどが実際に足を運んでくれた。

披露宴を行えない時代だからこそ、一味違うフォトウエディングを
さらに10月から新たに予約受付を開始したサービスが「茶の間ウエディングプラン」。6つの「茶の間」の中からお好みの場所を選び、それぞれの特徴を活かしたロケーションの中で最高のフォトウェディングを撮影するプランだ。コロナ禍で中止が相次ぐ結婚式を屋外の安全な空間で行えるとして、披露宴を行えなかったご夫婦などから好評を博し、県内外から予約、問い合わせがある。ちなみにプロジェクトの中心人物である鈴木氏は20代で、その他のチームメンバーも同世代。ターゲット層と年齢が近く感覚が似ていることに加え、「おもしろそう」と感じたことにすぐに着手する実行力が、コロナ禍における「茶の間」の低迷を支えたといえるだろう。

観光ホテルとも連携し、地域活性化にも貢献
6つの「茶の間」の中でも「日本平」は眺望もアクセスもよく、県外から多くのお客様を集められる場所として期待されていた。「茶の間」がアイコンとなり、日本平山頂での新たな過ごし方を提示することで観光交流やコロナ禍における観光振興に寄与できればと、「日本平ホテル」に業務の連携を依頼したところ “地域の活性化のために”と快諾してもらった。「茶の間」を目的に若い層のホテル利用客が増えるなど、思わぬ発見もあった。その他には「伊豆マリオットホテル修善寺」と「茶事変」がコラボし、4種のウェルカムティーや富士山まる茂茶園五代目・本多茂兵衛氏がお茶とハーブを合組(ブレンド)したお茶2種を提供するなど、コロナ禍にも対応したお茶の新しい楽しみ方を広めながら、地域活性化にも貢献している。

地域の状況も見ながら、徐々に県外客の誘致を再開
5月の緊急事態宣言解除後、静岡県内にお住まいの方に限定した予約再開に向け、まずは参画しているお茶農家さん向けに新型コロナウイルス対策のマニュアルを作成。さらに以前予約をしてくれていた県内の方にDMを送信すると同時に、ストップしていたSNSへの投稿も行い、再開に備えた。「うれしいことに6月だけで200名近くの方にお申し込みいただきました。」と鈴木氏は笑顔で語る。7月からは県外の方の受付も開始した。コロナ禍での観光客の受入について、判断が難しい時期だったため、農家さんだけでなく近隣にお住いの方々にも配慮しながら、徐々に対応する「茶の間」の数を増やしていった。再開から2,000名ほどの方が足を運んでくれているが、現在は緊急事態宣言対象エリアの方の予約をキャンセルとし、新規受付も一時停止している。来年度の目標は利用者数を2倍に増やすこと。厳しい状況は今後も続きそうだが、実現に向けて「オリジナルスイーツの開発やお茶の新しい楽しみ方の提案なども行いながら、静岡のお茶文化を支えていきたい」と鈴木氏は語った。
