オーダー制、デジタル化・・・老舗ホテルが実現した、先駆者ならではの新バイキングスタイル

公開日:2021/1/29

オーダー制、デジタル化・・・老舗ホテルが実現した、先駆者ならではの新バイキングスタイル

帝国ホテル 東京(東京都千代田区)は、“バイキング”発祥のホテル。1958年に日本初のブフェレストラン「インペリアルバイキング」(現・インペリアルバイキング サール)が誕生したのが始まりである。このコロナ禍でもお客様にバイキングの醍醐味である“好きなものを好きなだけ”楽しんでいただくために行った同ホテルの取り組みとは。同施策の旗振り役である、レストラン部マーケティング課長の平石理奈氏に話を伺った。

60年以上の歴史の中で初めて、レストランのフロアからお客様の姿が消えた

帝国ホテル 東京・本館17階の「インペリアルバイキング サール」は、“予約が取れない”と言われる人気レストラン。以前は平日・休日問わず、1日1,000名ほどのお客様が利用していたという。しかし、緊急事態宣言の発令に伴い、4月2日に営業を停止。「敬遠されるバイキング形式の安全・安心を担保しながら、 “選ぶ楽しさ”を保つにはどうすればよいのか。そして帝国ホテルらしさをどう残すか。様々な角度から検討を重ねました。」と平石氏は振り返る。調理・サービス・マーケティングのスタッフで構成された運営再開プロジェクトチームを発足させ、社内のシステム・食料調達・施設・広報部門と連携しながら、バイキングの先駆者としての誇りを胸に改革に取り組んだ。

オーダー制、デジタル化・・・老舗ホテルが実現した、先駆者ならではの新バイキングスタイル 60年以上の歴史の中で初めて、レストランのフロアからお客様の姿が消えた

テーブルまで出来立ての料理を。バイキングにおける新しい価値観を創造

新しい生活様式に対応するため導入したのが、ご注文いただいた料理をテーブルまでお届けする「オーダーバイキング」形式だ。まず着手したのが、タブレット端末の導入。平石氏は「幅広い年齢のお客様が利用するお店なだけにデザインと操作性は“シンプルで分かり易く”を意識するだけでなく、スタッフによる操作法の丁寧な説明も心掛けるようにしました。」と語る。
また、着席するとまず食前スープとして、帝国ホテル伝統のダブルコンソメスープを提供し、続いて2段スタンドにシェフおすすめの冷前菜と温かいパンの盛り合わせが届けられる。従前のバイキングスタイルではお客様が料理台に集まり密になってしまうため、それを回避するための対策だが、“おもてなし”を感じていただくための工夫もなされている。「タブレットで注文いただいたお料理は、スタッフがお席にお届けしますので、ゆったり食事を楽しむことができます。一方、目でも楽しめるデザートは“見て選ぶ楽しさ”を残したかったので、お客様自身でアクリル板越しに選んだものをスタッフが盛り付けるスタイルを残しました。」と平石氏。
さらにシェフがお客様の下へ伺いワゴンサービスにて出来たての料理を提供するとした“五感”を刺激する演出や、モニター配信をすることで席に居ながらにしてキッチンのライブ感を実現。お客様目線を大事に、安全を守るための“工夫”と、おもてなしの“進化”、この2つのバランスでプロジェクトは進んだ。
こうして、8月1日、1958年当時の開店日であり、その後記念日として制定した「バイキングの日」に営業を再開。収容人数、入場時間のご案内方法、換気の見直しなど3密対策と同時に、全ての料理台にアクリルカバーを設置する万全の体制で再スタートした。

オーダー制、デジタル化・・・老舗ホテルが実現した、先駆者ならではの新バイキングスタイル テーブルまで出来立ての料理を。バイキングにおける新しい価値観を創造

調理スタッフとサービススタッフが一丸となることで、お客様満足度もアップ!

再開準備にあたり料理長の杉本雄氏は、スタッフ全員に「調理スタッフとサービススタッフの垣根はない。お客様のために何ができるかを一緒に考えよう」と発信した。オーダー通りに料理を作り届けるだけでなく、お客様の食事のスピードやテーブルの雰囲気をサービススタッフが察し、調理スタッフと密にコミュニケーションを取り最適なタイミングで料理をお届けするよう、店全体で応えている。平石氏によると「以前はお客様ご自身でお料理を取りに行かれるスタイルでしたので、お客様とスタッフの接点も限られていましたが、今ではそこに会話が生まれるようになりました。」とのこと。
再開後のお客様アンケートでは「安全・安心」「料理の質」「スタッフの対応が良い」というワードが上位にランキング。さらに、出来立ての料理を届ける形態へ切り替えたことで、「以前よりも更においしく感じる」という嬉しい声も多いという。

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フードロス対策も同時に実施

再開への準備と同時に取り組んだのが、フードロス対策。ブフェスタイルは料理をずらりと並べ見た目も楽しいが、多くの廃棄を生み出しやすいのも事実。その中で、お客様が召し上がりたいものをその都度注文するオーダーバイキング形式への変更は、廃棄食材の削減と、その分仕入食材の質の向上をもたらすことに繋がった。また再開にあたり、「サステナブルシーフードや循環型野菜など環境に配慮した食材選びにも積極的になりました。これからは、環境意識の高いお客様のご利用機会も増えていくと思います。フードロス対策をはじめとしたSDGsへの取り組みは、ますます大事にしていきたい」と平石氏。
今回、帝国ホテルが構築した新スタイルは、多くのヒントが凝縮されている。老舗でありながら柔軟に変化し、新しい価値を提供する姿勢にこれからも注目したい。

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