ふぐ料理とVR映像で、宿泊体験を自宅で再現!現地宿泊に代わる新たな販路を開拓

公開日:2021/1/29

ふぐ料理とVR映像で、宿泊体験を自宅で再現!現地宿泊に代わる新たな販路を開拓

創業50年以上の歴史を持つ「てしま旅館」(山口県山口市)のコロナ禍での新たな取り組みが話題を呼んでいる。旅館で人気のふぐ料理を発送し、さらに購入者特典として、旅館の宿泊シーンを収めた映像を購入者に配信するという斬新な取り組みだ。その名も「VRてしま旅館&ふぐ会席」。代表の手島氏に話を伺った。

宿泊業の売上はゼロ。グッズの売上で何とか事業を継続している状態

郷土料理を楽しみながら、ゆっくりと寛げる雰囲気を好んでくださるお客様、そして野良猫の保護活動の一環として2017年に同旅館の中に新たにスペースを設けた「猫庭(猫の保護施設)」の活動に賛同して頂けるお客様たちに支えられ、順調に経営を続けてきた同旅館。しかし、そんな人気旅館にとっても、新型コロナウイルスの影響は大きかった。緊急事態宣言中は旅館業の売上がゼロになるなど今後の見通しが立たない状態が続き、オンラインストアの猫庭グッズなどの売上だけで、なんとか事業を存続している状態だった。

ふぐ料理とVR映像で、宿泊体験を自宅で再現!現地宿泊に代わる新たな販路を開拓 宿泊業の売上はゼロ。グッズの売上で何とか事業を継続している状態 猫庭(猫の保護施設)の外観
猫庭(猫の保護施設)の外観

「お客様が来ることができないならこちらから行く」という型破りなアイデア

「宿泊したかったのに残念です」というお客様からの声も頂く中で手島氏が考えたのは「お客様が来ることができないなら、こちらから出向いて行くしかない」という旅館としては型破りなアイデアだった。まず取り組んだのは、自慢のふぐ料理を商品化すること。「鉄刺(てっさ)」「ふぐの身皮焼き」「てっちり」と、ふぐの魅力を余すことなく堪能できる「会席セット」をオンラインで販売した。

ふぐ料理とVR映像で、宿泊体験を自宅で再現!現地宿泊に代わる新たな販路を開拓 「お客様が来ることができないならこちらから行く」という型破りなアイデア

宿泊シーンを収めたVR映像を購入者限定で特別配信

しかし、単にふぐを送るだけでは旅館の魅力は伝わらず、ただのネット販売に終わってしまう。そこで考えたのが、「ふぐ会席セットを購入して頂いたお客様に旅館のVR映像を配信しよう」というアイデア。かねてから動画サイトに猫の紹介を趣旨とした「猫庭」の動画をアップし、猫好きのお客様や常連客と交流を深めていたこともあり、準備はスムーズに進んだ。客室やロビー、大浴場などを映像に収め、まるで実際に旅館に宿泊したかのような体験を味わえる動画を配信。たとえばお風呂の映像は、湯船に浸かっている目線で撮影するなど、リアリティを重視した。

ふぐ料理とVR映像で、宿泊体験を自宅で再現!現地宿泊に代わる新たな販路を開拓 宿泊シーンを収めたVR映像を購入者限定で特別配信

無料サービスの利用で運営費用はほとんどゼロ

「VRてしま旅館&ふぐ会席」の企画・運営費用は、ほとんどゼロ。オンライン販売サイトは初期費用・月額費用ともに無料のサービスを利用し、動画の公開は無料の動画サイトを利用している。そのため、多くの費用をVR映像を流すために必要なハイスペックPCとVR対応カメラに充てることができ、良質な映像機材を揃えることができた。ちなみに、購入者に配信される映像は、VRゴーグルをすることでよりリアルな体験ができるが、つけなくても動画サイトで360度の角度で楽しむことができるので、利用者を限定せずに配信できる。

ふぐ料理とVR映像で、宿泊体験を自宅で再現!現地宿泊に代わる新たな販路を開拓 無料サービスの利用で運営費用はほとんどゼロ

コロナ禍に直面しなければこのチャレンジは生まれなかった

思いついたアイデアをスピーディに実行に移すことができた理由は、「何があっても事業が傾かないように柱を何本も持っていないといけない。そんな危機感が、常にあったからです」と語る手島氏。さらに、「うちは地方にひっそりと構えている旅館なので、旅館業だけに依存していては生き残れない。SNSや動画サイト、オンラインショップなど、新しいチャネルをいくつも持ちながら、自社のサービスと結びつけることが重要だと思っています」と、小規模旅館ならではの特性を活かしながら、柔軟な発想で経営をすることが重要だと力説する。

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今後もオンラインサービスを積極的に活用しながらチャレンジを続けていく

コロナ禍の逆境から生まれた「VRてしま旅館&ふぐ会席」は、お客様からの反応も上々。中には「こんなに美味しい料理を自宅で作ることができるなんて!今まで生きてきた中で最高の食事を味わえました。」という声まであった。そして、当商品の効果もあってか、GoToトラベルキャンペーン期間中は予約が殺到。「コロナが明けたら絶対に行きます」という声も多くあり、アフターコロナの効果も期待できる。
「待っていてもチャンスは生まれませんから、どんどん新しいチャレンジをしていきます。」と、手島氏は前を向く。今後も、SNSや動画サイトなど、オンラインを活用しながらお客様との交流を深めたり、新たな企画を打ち出しながら、コロナ禍を生き抜いていくつもりだ。

ふぐ料理とVR映像で、宿泊体験を自宅で再現!現地宿泊に代わる新たな販路を開拓 今後もオンラインサービスを積極的に活用しながらチャレンジを続けていく