電話注文による松屋ならではの“御用聞き”で新たな買い物を実現。

公開日:2021/2/26

電話注文による松屋ならではの“御用聞き”で新たな買い物を実現。

月に2頭しか生産されない尾崎牛など、高品質で特徴的な品揃えで多くの顧客に愛される銀座松屋(東京都中央区)の生鮮売り場。2020年11月よりチェッカー無線と提携し、電話で注文を受け、タクシーが即日配送する「買い物代行サービス」をスタートさせた。今回は企画者である松屋銀座の今井克俊氏にお話を伺った。

「買い物はしたいけど、感染は怖い」1日30件を超える電話注文が殺到。

松屋銀座の客足が鈍り始めたのは、2020年2月中旬頃だが、今井氏が担当する地下2階・1階の食品売り場はそれほど顕著ではなかった。3月の緊急事態宣言が出る前には、自宅に備蓄する食品を求めて多くの顧客が来店する一方、電話注文を求める問い合わせも増え始め、多いときは1日30件以上寄せられていた。今井氏は「嬉しい反面、肉・魚など生鮮食品は即日配送ができなかったため、お断りせざるを得ませんでした。」と当時を振り返る。

電話注文による松屋ならではの“御用聞き”で新たな買い物を実現。 「買い物はしたいけど、感染は怖い」1日30件を超える電話注文が殺到。

新たな可能性を求め「松屋銀座×タクシー」で即日配送を企画。

4月に入ると、松屋銀座は政府の要請を受けて休業。休業期間中、飲食店をサポートするための特例措置としてタクシーによる食品の有償運送が期間限定で認められたことを知ると、今井氏は「百貨店でも活用できないか」と考え、チェッカーキャブ無線協同組合の浅野元文氏に「タクシーを利用した買い物代行サービスを立ち上げたい」と協力を仰いだ。実施までにはタクシー会社との交渉・社内外調整など多くの困難を伴ったが、前年度比で−20%(百貨店全体で−40%)になった売り場の売上回復策の一つとして粘り強く交渉を重ね、10月に特例措置が期間限定から恒久化されたことをきっかけに、11月4日ついにサービス開始にこぎつけた。

電話注文による松屋ならではの“御用聞き”で新たな買い物を実現。 新たな可能性を求め「松屋銀座×タクシー」で即日配送を企画。

目指すは単なる電話注文ではなく“痒いところに手が届く”松屋ならではの御用聞き。

「松屋がやる以上、ありきたりの買い物代行という訳にはいかない」と今井氏は意気込む。サービス開始前にタクシードライバー向けの接遇研修を実施するとともにスタッフの電話応対のやりとりに関しても、通常の対面以上のきめ細やかな受け答えを徹底した。それにより「今日は鍋をやりたいんだけど、何かいいのある?」など様々なオーダーに対しても顧客の生活像・家族像などを細かく把握し、求める最適な商品を提供することを可能とした。そのためには毎朝売り場を回り、どのような商品があるのか、旬の商品はどれかを把握する必要があり多くの労力を要するが、顧客から信頼を得て「〇〇さんが選んだものなら何でもいいわよ。」と言って頂ける喜びには代えられないと言う。

電話注文による松屋ならではの“御用聞き”で新たな買い物を実現。 目指すは単なる電話注文ではなく“痒いところに手が届く”松屋ならではの御用聞き。

オンラインでは叶わない電話注文ならではの魅力を追求していきたい。

現在はご年配の親御さんがいる家庭や、夫婦共働きで小さいお子様がいるご家庭からの注文がメインだ。平均価格は1万円~1万5000円程度。基本は地下2階の生鮮食品のみの対応だが、常連客から希望があれば、クリスマスにはケーキ、大晦日にはおせちなど、他のフロアの惣菜やスイーツ、レストランフロアの料理のデリバリーにも柔軟に対応している。このような“御用聞き”ができるのは電話注文ならでは。指定の注文しかできないオンラインと違い、顧客から直接オーダーを聞き取り、細やかな確認や提案をしてこそ実現できるものだ。現状は通常の売り場業務と兼務している状態のため、1日10~20件程度の配達が限界だが、2021年1月からは事業拡大に備えて専用電話も開設した。法律の関係上、食品しか運ぶことができないが「ゆくゆくは食品以外にも、生活雑貨など、幅広いオーダーに応えられるようにしたい」と今井氏は抱負を語った。

電話注文による松屋ならではの“御用聞き”で新たな買い物を実現。 オンラインでは叶わない電話注文ならではの魅力を追求していきたい。

コロナ禍で落ち込むタクシー業界には、新しい試みが必須。

44社・約3,000台が加盟するチェッカーキャブ無線協同組合の浅野氏は5月、松屋銀座の今井氏より相談を受けた時のことを「できるとは断言できませんでした。やることを前提に、どうしたら、いただいた話を進められるかを考えました。」と振り返る。そもそも、人を運ぶのと物を運ぶのでは法律も異なれば、勝手も違う。事前に車両登録・講習義務等、タクシーによる貨物運送開始のハードルがあったが、組合に加盟する各社への浅野氏の懸命な働きかけもあり、最終的には10社近くが名乗りをあげた。サービス開始以後も登録車両を増やす事業者も出てきていると言う。浅野氏は「外出したくてもできないという点では、年齢層を問わず皆さま同じ状況。タクシーとしての活路を見出すためにも、必要としてくれているところに新しいサービスを提供していきたい。」と展望を述べた。

電話注文による松屋ならではの“御用聞き”で新たな買い物を実現。 コロナ禍で落ち込むタクシー業界には、新しい試みが必須。