ランチ以降のアイドルタイムを有効活用!客席をテレワークスペースとして貸し出すことで、飲食店の新たな可能性を模索
公開日:2021/2/26
コロナ禍における飲食店、特に夜の営業を主体とする多くの店が通常営業ができずに苦戦を強いられている。そんな中、新たな可能性として期待ができるサービスが誕生した。それは「ワインバルESOLA 新宿店」がスタートした、飲食店によるビジネスパーソンへのテレワークスペースの貸し出しだ。今回はサービスの詳細と導入のハードルなどについて店長の日高氏に話を伺った。
コロナ禍で売り上げが80~90%ダウン。感染拡大の影響で二度の休業を経験
世界各国約100種類のワインを楽しめる新感覚のビュッフェスタイルが人気を博し、2018年のオープンから順調に営業を続けてきた「ワインバルESOLA 新宿店」。休日になれば、120ほどある客席はいつも昼から満席だった。しかし、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大によって状況が一変した。「とはいえ、3月初旬までは海外のお客様も多かったため、どこか他人事なところもありました。しかし徐々に客足が途絶え、結果的に売り上げが80~90%もダウンしてしまいました。」と日高氏は影響の大きさを振り返る。そして一度目の緊急事態宣言を受け、4月から休業。6月中旬に再開するも客足が戻らないまま、感染者数増加の影響で8月半ばから1ヶ月ほどの再休業を余儀なくされた。
ビジネスパーソンのニーズに応えることで、新たな収入源を確保するとともに店舗の認知度アップ
12月といえば飲食業界にとっては繁忙期だが、コロナ禍においては同店も例にもれず業績が落ち込んだ。その状況を打破するためにランチ営業とお弁当のテイクアウトやデリバリーを始めるも、お客様に幅広く認知してもらうには時間がかかる。さらにランチからディナーまで通し営業を行っても、客足はまばらな状況だった。「そこで新たに始めたのが、ビジネスパーソンをターゲットにしたテレワークスペースとしての貸し出しです。在宅ワークでオン・オフの切り替えができずに困っている方や、家族やパートナーがいて集中できないと悩んでいる方に、12時~20時の間、空席をテレワークスペースとして提供することを考えました。さらに、この取組で店舗の認知度を高め、いつかコロナが落ち着いたときに当店に食事に来てもらえればと考えました。」と日高氏は導入の理由を語る。
新規の設備投資はゼロ、煩雑な準備を要せず、スムーズにサービスを開始
2020年12月からテレワークスペースの貸し出しを検討し、サービスのスタートは年明けすぐの2021年1月11日。「素早く対応できたのは、飲食店のテレワークスペースの貸し出しをサポートしている企業と連携し、予約受付に使うアプリを利用することができるようになったこと(アプリの利用料は初期費用・ランニングコストは無料で、利用された時に利用料を50%ずつシェア)。そして、パソコンやタブレット、スマートフォンなどを自由に使えるようにと、オープン時から全席電源・Wi-Fi完備にしていたのが大きいと思います。大がかかりな工事は一切必要ありませんでした。」と日高氏は、導入時のハードルの低さを強調する。さらに注目したいのが、オペレーションのシンプルさだ。「利用者は入店前に専用アプリで受付・決済を済ませているため、スタッフは席へのご案内程度しか業務が発生しませんし、接触する機会も限られているため安全も確保できています。マニュアル作成や勉強会の開催などに時間をかけることもなく、スムーズにサービスをご提供することができました。」と語る。
スペース利用料のほかに本来営業でも利益。今後も時代のニーズに合わせたサービス展開を
「ワインバルESOLA 新宿店」が貸し出しているテレワークスペースは、既存のボックス席を利用するため、テーブル同士の間隔が充分にとられており、ソーシャルディスタンスそして作業に集中できる環境が整えられている。利用者は30~40代の男性が中心で、滞在時間は2時間程度がメインだ。意外だったのは、テレワークスペースの貸し出しのほかにフードやドリンクのオーダーも入るため、本来営業の利益も見込めること。仕事の“お供”としてフードやドリンクは一定程度の需要があるようで、テレワークと飲食が思わぬ形でマッチしたと言えるのかもしれない。「すでに電源やWi-Fiが完備されている環境であれば導入もラクですし、スタッフの教育にもまったく時間がかかりません。さらにこの状況下で売り上げがアップするのであれば、同業他社の方もやらない手はないのではないか…というのが私の感想です。」と日高氏は同取組の価値の高さを強調する。「今後もコロナ禍を生き抜いていくために、時代のニーズに合わせて様々なサービスを展開していきたいです。」と同店のさらなるサービスに期待がかかる。