キャッシュレス決済と越境ECにより、コスト削減と国内外での販路拡大・リピーター増加を目指す

公開日:2020/10/30

キャッシュレス決済と越境ECにより、コスト削減と国内外での販路拡大・リピーター増加を目指す

デジタル化が進む現在だからこそ、「手を使って書く」ことの素晴らしさと楽しさを伝えたいという思いで2010年に開店した文具店「カキモリ」(東京都台東区)。オーダーメイドのノートやインク等「書く」ことにこだわったオリジナル商品を販売している。

25 %を占めていたインバウンドがゼロに

新型コロナウイルス感染拡大以前は、欧米のメディアや旅行サイト等で取り上げられたこともありインバウンド観光客で賑わっていた。欧米では、「カキモリ」のような形態の店舗は少なく、東京観光の体験のひとつとして位置付けられていたのである。感染拡大後は、来店者の約25%を占めていたインバウンド観光客はゼロになり、地方からの訪客も激減した。店舗の売り上げは激減し、危機感を感じるようになる。緊急事態宣言発令時に、いったん休業し、経営戦略の見直し、コスト削減のための効率化、そして新型コロナウイルス感染予防対策の策定を行ったという。

キャッシュレス決済と越境ECにより、コスト削減と国内外での販路拡大・リピーター増加を目指す 25 %を占めていたインバウンドがゼロに

コロナ対策を機に、キャッシュレス決済が加速。店舗が提供する「体験」の質を向上。

カキモリが大事にしているのは、オーダーメイドの対応から商品を受け渡して店舗を後にするまでの顧客の体験である。店舗の外観、モダンでデザイン性が高く広々とした内装。倉庫をリノベーションし、知的で創造性の高い感性を刺激する空間で、「自分の手で書く」という行為を楽しめる道具を提供する。商品展示もシンプルで機能性が高く“店内を巡るだけでわくわくする”そんな空間の提供に大きな価値があると考えている。その体験のストーリーを中断してしまうのが「支払い」のステップだった。自分のために、プレゼントにと、少し贅沢なオーダーメイドノートやインクを購入する際に、スタッフに相談しながら、理想の「道具」を手に入れ、楽しい気持ちのままに店舗から出ていく。そこに、混んでいるレジらに並び、現金のやりとりをするという行動が入ることで、一連の体験が遮断されてしまう。
折しも、新型コロナ感染予防の観点からも、感染リスクが高いといわれる現金のやりとりのないキャッシュレス決済の導入は推奨されていることもあり、すでに導入していたキャッシュレス決済の利用実績は増え、6割程度の決済がキャッシュレスになったという。

キャッシュレス決済と越境ECにより、コスト削減と国内外での販路拡大・リピーター増加を目指す コロナ対策を機に、キャッシュレス決済が加速。店舗が提供する「体験」の質を向上。

キャッシュレス決済と現金決済の併用はコストの負担が大きい。目指すのはレジのない店舗。

カキモリのキャッシュレスは、さらに先を目指している。それは、レジを介さずに、スタッフの端末で決済を済ませるというものだ。それにより、システム契約料(約4千円ほど)と、親機となる機器端末の購入費用(約7万円ほど)を合わせてスタッフ1人あたり8万円弱の投資費用を10人分用意する必要があるが、その分接客やワークショップ、イベント運営など、ほかの業務に取りかかる時間が確保できる。さらに、売り上げの入金作業に伴う人件費や、お釣りを用意するための両替手数料などを削減できることから、経営面で見てもメリットが大きいのだ。現在は、キャッシュレス決済と現金決済の併用で運営しているが、今後は完全キャッシュレス化による「レジのない店舗」を目指している。

キャッシュレス決済と越境ECにより、コスト削減と国内外での販路拡大・リピーター増加を目指す キャッシュレス決済と現金決済の併用はコストの負担が大きい。目指すのはレジのない店舗。

海外進出計画を、越境ECの強化に変更。

キャッシュレスとともに、力を入れているのが、越境ECを含むECの充実である。これまでは店舗でしか注文できなかった手帳やノートなどのオーダーメイドシステムを構築するもので、店舗のホームページと統合して多言語対応のECサイトの構築に着手中だ。構築には、東京都の助成金を活用することでコストを抑えらえる予定だ。オンライン上でのオーダーシステム構築は、かねてから温めていたアイデアで、今回のコロナ対策をきっかけに「良い機会」と捉え、迷うことなく申請することができたという。
また、現在もインスタグラム連携の通販を実施。zoomを活用したオンラインイベントなどを開催したことなども功を奏し、ECに限れば、売り上げは昨対で150%増となっている。もともと、海外へのリアル店舗での進出を考えていて、それにより総売上を2倍にする計画であったが、現在は新型コロナ感染拡大によりその計画を取りやめ、越境ECによる海外への販売拡大を図っている。ポストコロナの反転攻勢のための戦略として攻めの投資を行うことも大切だと広瀬氏はいう。

キャッシュレス決済と越境ECにより、コスト削減と国内外での販路拡大・リピーター増加を目指す 海外進出計画を、越境ECの強化に変更。

完全キャッシュレス化が、単なる業務効率化ではなく、売り上げ増加につなげるための大きなヒントに。

ECサイトの再構築にあたり、新たに考えたのが顧客管理システムを導入することだった。オンラインはすべてカード決済となる。利用の際に取得していただく、メールアドレス(ID)、パスワード情報を店舗側でも管理。購入履歴などが分かる状態にしておき、ご来店いただいた際に会員情報をスタッフがヒアリングし、「先日はオンラインでのご購入ありがとうございました」とお声掛けできるようにする。さらに、オンラインで商品をご購入後に、新商品の案内や、イベントの告知をメールで行う。もしくは、カキモリらしく手紙に書いてお送りする。そんなイメージも思い描いている。もちろん、店舗での販売履歴も、顧客管理システムに蓄積される。あらゆる決済時に取得できる情報をデータとして蓄積し、お客様との距離を縮めるためのアイデアとして活かしたいというのだ。これにより、完全キャッシュレス化が「単に業務効率を上げるだけ」ではなくなり、「リピートビジネスを実践するための売り上げ対策」に変わった。コロナウイルス感染拡大をきっかけとしたECサイトの再構築により、完全キャッシュレス化を目指す理由が明確になった瞬間だった。

キャッシュレス決済と越境ECにより、コスト削減と国内外での販路拡大・リピーター増加を目指す 完全キャッシュレス化が、単なる業務効率化ではなく、売り上げ増加につなげるための大きなヒントに。

提供するサービスの価値を高め客単価を上げる。それが客数減少に対する最適解である。

今後のビジネスのあり方についてカキモリでは、客単価を上げることが重要であると語る。「高いものを売ることに罪悪感を感じてはいけない」という考えにシフトするべきであるというのだ。限られた客数で売り上げを確保するためには、コストのかかるリアル店舗では、オーダーメイド商品等の高価な商品を展開し、それらが並ぶ店舗を眺めるだけでも希少な体験を得ることができるようにする。安価なペンなどのラインは店舗から外してECでの販売に切り替える。さらにECではオーダーシステムを構築することで、店舗と同じような体験ができるようにした。オンライン上でのイベントも開催する。そうすることで、これまで以上に店舗を訪れることが特別な体験となり、店舗を求める顧客と店舗の間に特別な関係ができる。「新しい日常」で持続可能なビジネスを考える際には、店舗販売とEC販売の差をなくすような柔軟なアイデアや、前向きな発想が必要だという。

キャッシュレス決済と越境ECにより、コスト削減と国内外での販路拡大・リピーター増加を目指す 提供するサービスの価値を高め客単価を上げる。それが客数減少に対する最適解である。