若手社員が発案。1カ月間泊まり放題のサブスクリプションで客室の安定的稼働に成功

公開日:2021/8/30

若手社員が発案。1カ月間泊まり放題のサブスクリプションで客室の安定的稼働に成功

コロナ禍以前は一年を通じて国内外から多くの観光客が訪れていた一大観光地、長崎県長崎市。2022年の九州新幹線の西九州ルート一部開業に向けて、大規模な開発工事が進められているJR長崎駅一帯を見渡す15階建ての「ザ・ホテル長崎BWプレミアコレクション」では、コロナ禍においてある宿泊プランが誕生し話題となった。同社初の試みでもある「宿泊サブスクリプション」の経緯と反応は?副支配人の森内圭吾氏に話を伺った。

教育旅行をはじめ団体客がゼロに。前年比で最大マイナス92%まで落ち込んだ2020年

世界的なホテルチェーン「ベストウエスタンホテル」の中でもハイクラスブランドとなる「プレミア」を称する国内唯一のザ・ホテル長崎BWプレミアコレクションにとって、2020年は厳しくも挑戦の年だった。「とにかく何をやれば良いのか分からず、スタッフ全員で日々館内を清掃していました」と副支配人の森内は当時を振り返った。同ホテルは、ショップや医院といったテナントとの契約上、どんなに宿泊客が減少しても、他社のように休館という選択肢を取ることはできない。また親会社の方針により1人の解雇も行わず、雇用調整助成金や最上階レストランなど直営飲食店の時短営業、休眠フロアを設けることによる光熱費等のコスト削減といった打ち手のみで乗り切らねばならなかった。「2020年は総じて前年比マイナス40%〜50%。一番酷い時はマイナス92%まで落ち込みました」と森内氏。ただ、これまで忙しすぎて目が届かなかった部分など、細部に至るまで全社員が総出でホテル内を磨き上げるには良い機会になったとも話す。

若手社員が発案。1カ月間泊まり放題のサブスクリプションで客室の安定的稼働に成功 教育旅行をはじめ団体客がゼロに。前年比で最大マイナス92%まで落ち込んだ2020年

コロナ禍を機に若手社員も交えたミーティングをスタート

2005年の開業時からこのホテルに勤める森内氏は、副支配人と宿泊販売課のマネージャーを兼務。若手社員の指導や育成も行う立場だが、従来は現場の業務を優先させるため、上層部が方針などを話し合い、それを各部署で通達するという一方通行なコミュニケーションだったという。「なにせ宿泊客が減って時間はたっぷりありますから、普段は現場業務に追われていた社員にもコロナ禍で何をすべきか、何ができるのかを話し合ってもらいました」。とにかくやれることは何でもやってみようと現状を前向きにとらえ、2020年5月から若手を交えた定例ミーティングが始められた。その中で生まれたのが、「宿泊のサブスクリプション」というアイデアだった。

若手社員が発案。1カ月間泊まり放題のサブスクリプションで客室の安定的稼働に成功 コロナ禍を機に若手社員も交えたミーティングをスタート

動画やファッション、家具、住宅まで…。拡大する定額サービスに着目

発案者はフロント担当の女性社員。毎月定額を支払うことで、季節のさまざまな花が自宅に届けられるサービスを利用していた彼女は、今やあらゆるものが定額サービス化されているのだから、宿泊のサブスクも面白そうだと考えた。早速、森内氏が管轄する宿泊販売課で実現可能性を具体的に検討。2020年9月には第一弾として、月6万円でツインやダブルの部屋に泊り放題という定額プランを自社のホームページや発行物で打ち出した。通常、1泊の原価が1万5000円の部屋に6万円で最長1カ月間も滞在できるのは破格だ。しかもホテルの立地やグレードを考えると、コロナ禍以外では不可能なプランだった。

若手社員が発案。1カ月間泊まり放題のサブスクリプションで客室の安定的稼働に成功 動画やファッション、家具、住宅まで…。拡大する定額サービスに着目

サブスクリプションによって連泊客の意外なニーズが浮き彫りに

当初ホテルとしては、コロナ禍で注目され始めていた「ワーケーション」など、テレワーク目当てのビジネス客がサブスクのメインターゲットになると予想していた。ところが蓋を開けてみると、医療従事者、駅周辺の開発工事の関係者、親族の介護を行うため他県から帰省した一般客など、想定外の客層による利用が目立っていたのだ。「この結果は意外でしたね。特にアンケートを取ったわけではないのですが、30泊もしていただくと、スタッフともコミュニケーションが生まれて、皆さんどこから何の用事で来たのか話してくださるので判明しました。逆にテレワーク利用はゼロでした。」と森内氏は第一弾の実績を教えてくれた。

若手社員が発案。1カ月間泊まり放題のサブスクリプションで客室の安定的稼働に成功 サブスクリプションによって連泊客の意外なニーズが浮き彫りに

コロナ後も意見やアイデアを生み出す場を継続させていきたい

破格のサブスク第一弾は地元メディアでも大きく取り上げられ、その結果ホテルの宣伝に繋がって飲食利用客が増えるといった波及効果も生まれた。その後、2021年1月〜の第二弾、同年6月〜の第三弾は価格を18万円に上げて実施したが特に利用客が減少することはなく、いずれも約350泊分の客室稼働を達成できたという。さらに「何より大きな収穫は、この取り組みをきっかけに、コロナ禍という逆境でも前向きにチャレンジできて、自分のアイデアを実現させられることに気付けたことです。ぜひ今後も続けていきたいです」と森内氏は今後の展望を語った。若手社員ミーティングによってその後も、コスプレ写真撮影ができるデイユースプランや、15階の和庭園を使ったザリガニ釣りイベントなど、ユニークな企画が続々と生まれている。

若手社員が発案。1カ月間泊まり放題のサブスクリプションで客室の安定的稼働に成功 コロナ後も意見やアイデアを生み出す場を継続させていきたい