メイン事業である飲食店の売上が低迷する中、予約・注文・決済がスマホで完結するコロナ禍に適したシステムを開発!新たな事業の柱に。
公開日:2021/10/1

石田商事株式会社の代表取締役・石田正徳氏は、早稲田大学の近くで油そば店を4店舗展開。コロナ禍以前は毎日大勢の学生が足を運び、店は常に活気に溢れていた。しかし、大学が休校になると客足はパタリと途絶えてしまう。業績が落ち込む中で石田氏が取り組んだのが、店舗のタブレットなどではなく、お客様が自身のスマホを使うことで、料理やドリンクの予約から注文、決済が行えるコロナ禍に適したプラットフォームの開発だ。さらに、それと同時に次世代型飲食店「テッパンオヤジ。」(東京都武蔵野市)をコロナ禍においてオープンした意味とは。石田氏に詳しく伺った。
売上がコロナ禍前の10%までダウンする中で、早稲田の街に多くの学生が戻る日は来ない…と予測。
多くの学生が集まる早稲田には、和洋中に限らずたくさんの飲食店が軒を連ねている。その中でも石田商事株式会社が展開する油そば店「麺爺(めんじい)」は、毎日大勢のお客様が足を運ぶ人気店。早稲田に4店舗を展開するまでに成長した。しかし2020年4月、緊急事態宣言により大学が休校になったことで、街から学生たちの姿が消えてしまう。「メインのお客様は早稲田の学生さんだったため、売上はコロナ禍前の10%程度まで落ち込みました。少しでも底上げになればと、私たちが直接届けるデリバリーサービスなどを開始しました。しかし、アフターコロナになっても、きっと以前のようにたくさんの学生が大学に通う日々は戻ってこないということに気づきました。」と石田氏は当時を振り返った。

ファミレスで家族と食事をした際に感じた“選ぶ楽しさ”の軽減が開発のキッカケに。
「日本全国どこにいてもリモートで授業を受けられるというのは、大学にとっても学生にとってもメリットが大きいと聞きました。たとえ大学での授業が再開してもリモートと両立するはずで、前のように大勢の学生が通学することはないだろう──。じゃあ、どうする?ということで、次の道を模索し始めたんです。」と石田氏は語る。まず取り組んだのは、スマートフォンのメモに長年書き留めていたアイデアや疑問点などの見直しだ。そして、ここに書かれていた“客側から見た不満”の中にこそ新たなプラットフォームを立ち上げるためのヒントがあったという。「家族でファミレスに行った際、タブレットでの注文は一緒に料理を選ぶ楽しさを半減させていると感じてメモに残していました。そして時代は、他人のスマホやタブレットを不潔に感じてしまうコロナ禍。お客様一人ひとりが自分のスマホでメニューを見て、“どれにしようかな~”と友達や家族と話をしながらオーダーできる仕組みだったらどうだろう?と以前から考えていたんです。」と石田氏は教えてくれた。

非接触だからこそ使い勝手の悪さやバグは致命的。そのための実験的店舗として吉祥寺に出店。
以前から、何か新しいことに取り組みたいと考えていたものの、日々の忙しさからトライできずにいた石田氏の挑戦は一気に加速する。まずは知り合いのエンジニアに開発を相談。構想を伝え、カタチにしてもらいながらも“飲食店の経営者”の目線でどんどん改良を加えていった。「このプラットフォームのウリは机上の理論でできたものではなく、飲食経験者ならではのアイデアが随所に盛り込まれている点です。たとえばオーダーが入った料理やドリンクが表示される厨房のタブレットは、メニュー名をクリックすればレシピが見られるようになっているのでスタッフさんにも安心して働いてもらえるうえに、研修期間の短縮にもつながっています。」と石田氏。開発開始から半年後の2021年2月にシステムのベースが完成。同時に「テッパンオヤジ。」を吉祥寺にオープンする。「お客様はSNSアプリでお店とお友達になることで、システムの利用が可能になります。予約・注文・決済はもちろん、“水がほしいです”や“少し寒いです”という店員とのやりとりが非接触でできるところも、コロナ禍に適しています。実は吉祥寺に店をオープンしたのは、システムを利用してもらいながらブラッシュアップするため。実際に使ったお客様やスタッフの声を聞いたり、バグを発見したりしながら、半年間かけてより良いものに仕上がりました。」と石田氏は語る。

2021年10月にシステムを大々的にリリース!事業の柱を増やし、みんなが笑顔で働ける環境を。
慎重かつスピーディに開発を進めた理由は、このシステムを石田商事にとってのもう1本の事業の柱にするため。「飲食が落ち込んでいても、事業の柱が何本もあればスタッフさんは安心して働ける。そんな環境をつくりたいんです。」と石田氏は教えてくれた。そして現在は、2021年10月に行われる大規模な展示会でのシステムのリリースに向けて準備を進めているそう。「ビジネスモデルとしては月額料金で収益を得る予定でしたが、飲食はコロナ禍のダメージを大きく受けている業界。コロナの終息までは無料で利用してもらい、使い心地や人件費削減金額を実感してもらえればと。ちなみに吉祥寺の店での実験では、当システムを使った非接触での接客により、通常より2名程度の接客スタッフの省人化を実現しました。少子化で働く人が減る上に最低賃金が上がっていくという、飲食店の経営者にとって厳しい状況もサポートできたらと思っています。」と石田氏。近々、吉祥寺北口に別業態の飲食店のオープンを予定しているが、日中は「テッパンオヤジ。」と共にシステムの導入サポート会場として機能させるそう。そして、そこで利用希望者に使用方法を説明するのは店舗で働くアルバイトたち。圧倒的な行動力で周囲を牽引しながら、石田氏は業界に新風を吹き込もうとしていた。
