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コス・インターナショナルの取組み 東京都港区芝3-24-1 駿河ビル1階

代表取締役の小菅秀泰さん

近年、スポーツ観戦施設や空港などで「センサリールーム」が設置されたという話を聞くようになりました。聴覚や視覚などの感覚過敏な人達は、その刺激のせいで感情や行動などの調整が難しくなり、「パニック」と言われる混乱した状態に陥ることがあります。このような音や光などの刺激を低減させ、落ち着ける部屋が「センサリールーム」です。コス・インターナショナルでは、センサリールームにスヌーズレンを導入し、より心地良い空間を提供しています。これからの観光地におけるセンサリールームの必要性について、代表取締役の小菅秀泰さんにお話しを伺いました。

代表取締役の小菅秀泰さん

スヌーズレンコーナー(センサリーコーナー)の設置例

スヌーズレンとは

スヌーズレンとは、1970年代にオランダの重度知的障害者施設ハルテンベルグセンターで生まれた理念です。オランダ語でクンクンとあたりを探索する様子の「スヌッフレン」、うとうととゆっくり寛ぐ感じを表す「ドゥーズレン」という2つの言葉を組み合わせた造語で、「ありのまま、その環境を楽しむ」という意味合いを持っています。

スヌーズレンは、アクリル筒の中を水の泡が上昇するバブル・ユニット、ファイバーの束がキラキラ光るサイド・グロウ、壁などに映像を映し出すプロジェクター、ウォーターベッド、アロマの香りなど五感を刺激する機器や用具が取り揃えられた環境です。

当時は、重い障害を持つ人々が受け入れやすい刺激や環境を提供して、障害者自身が自分で刺激や環境を選択して過ごし、介護者やパートナーは同じ刺激や環境を共有してコミュニケーションをとる、というものでした。そののち、スヌーズレンの環境は問題行動を鎮静化させたり、発達支援などに効果があったりすることがわかり、知的障害、自閉症スペクトラム、ADHDなどの発達障害、精神障害、認知症などの緩やかな治療の場としても考えられるようになりました。
当社は1994年、日本に初めてスヌーズレン機器を本格的に輸入しました。重度心身障害児(者)施設、療育施設、特別支援学校、高齢者施設などにスヌーズレンを導入し、センサリールームを設置してきました。現在ではその数合計1,000ヵ所以上となり、施設におけるセンサリールームの必要性が広がっています。

スヌーズレンコーナー(センサリーコーナー)の設置例

感覚入力を満足させるスヌーズレン

感覚を刺激する機器や用具

サッカー観戦イベントをきっかけに

センサリールームが大きく取り上げられたのは2019年の発達障害児のサッカー観戦イベントです。発達障害の特性の一つとして感覚過敏があります。感覚受容が優れている子供たちにとって、スポーツ観戦は、応援などの大きな声や音、眩しいライトなどの刺激が強すぎて苦痛でしかありません。落ち着いていることができないため、スポーツ観戦が趣味だった家族もスタジアムに行くことを諦めている方が多いという現実があります。

そこで、発達障害のある子供と家族でサッカー観戦が楽しめる環境を、自治体、企業などが協力してそれぞれの強みを生かして創り上げました。当社は、部屋の一角にスヌーズレンのコーナー(センサリー・コーナー)を設置し、刺激が強くなった時に落ち着ける場所を提供しました。当社がセンサリー・コーナーを設置する際に注力していることは、「目的はサッカー観戦」ということです。センサリー・コーナーは、そこでおとなしく待たせておくための場所や、おもちゃなどで楽しむプレイルームでは意味がありません。

スポーツ観戦におけるセンサリー・コーナーの役割は2つあります。1つは、感情や行動の調整が難しくなった自分自身を落ち着けて、自分自身を取り戻す「カームダウン」ができること。もう1つは、感覚入力を満足させることです。感覚入力の満足とは、自分にとって心地よい光や音などを受容して満足するということです。スヌーズレンでは、感覚を刺激する機器や用具をいろいろと準備していますが、全て本人に選んでもらっています。センサリー・コーナーでは、自分が心地よいと感じる機器や用具を選び、自分で感情整備を行うことが大切で、「落ち着ける場所があるから、少し刺激の強い場所にいってみようか」という自主性にもつながります。センサリー・コーナーを出たり入ったりしながら、家族が嬉しそうに観戦している姿や、友達が楽しそうにしているのを見て、自分も応援席で観戦できるようになる、という子供たちが何人もいました。

感覚入力を満足させるスヌーズレン

感覚を刺激する機器や用具

センサリールームの整備が外出の機会を生み出す

感覚過敏の子供は、慣れない場所や、刺激が強い場所では混乱状態に陥ってしまうことが多く、一緒に出掛けている親や兄弟も外出や旅行、時には買い物すらできないということがあります。特性上、大声を発したり、多動になったりすることがありますが、状況を知らない第三者は不快感を示し、時に心ない言葉を投げることもあります。親や兄弟が怒られている様子や、悲しそうな顔をすることで、本人も深く傷つき、よりパニック状態になってしまうこともあります。その際に、自分を落ち着かせる場所がないことで、外出は苦痛という悪循環に陥ってしまうのです。そして、親や兄弟たちも外出が思い通りにいかないというストレスを抱えるようになってしまいます。

現状、センサリールームの設置は局所的ですが、センサリールームやセンサリー・コーナーがいろいろなところに設置されることで、「落ち着ける場所がある」という安心感が生まれ、本人だけでなく家族の外出意欲の向上につながると思います。また、誰もが旅行を安心して楽しめるようになるには、観光地にも設置が必要です。百貨店や公共の場所などでは授乳室やバリアフリートイレの設置が当たり前になったように、センサリールームやセンサリー・コーナーの設置も当たり前になる世の中を願っています。

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