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公益社団法人 国際観光施設協会 e-WAプロジェクトの取組み 東京都千代田区飯田橋2-8-5 多幸ビル九段2階

国際観光施設協会 副会長 ホテル分科会 会長 野出木 貴夫さん

車いすユーザーだけでなく誰もが抵抗なく利用できる準バリアフリー客室を目指して

公益社団法人国際観光施設協会はホテル・旅館などの観光施設における建築設備・インテリアなどの整備・改善や観光地の活性化・まちづくりについて調査・研究することを目的として活動している団体です。設計事務所、施工会社、建材・設備調度備品等のメーカー及び個人が会員の技術者集団であり、1953年の発足から70周年を迎えます。

これまで宿泊施設におけるバリアフリールームは車いすユーザーの総数を考えると充分とはいえない状況ですが、一般客室でも車いす使用者が利用できることになれば利便性は大きく前進します。そこで協会はこの課題解決のため、法的基準には届かないけども、それに準じて使える「準バリアフリー客室」を増やせないかと考えました。新たに開発した電動車いすを採用することで、車いすユーザーに便利なだけでなく、健常者にも快適で違和感なく利用でき、宿泊施設事業者にとっても取り組みやすく、また売りやすいユニバーサルルーム(新UD客室)の研究「e-WA プロジェクト(electric-Wheelchair Assistance Project)」を推進しています。具体的な取組みについて国際観光施設協会 副会長、ホテル都市分科 会長の野出木貴夫さんに伺いました。

国際観光施設協会 副会長 ホテル分科会 会長
野出木 貴夫さん

メカナムホイール

研究当初は車いすの調査から

客室を大掛かりに特異な面積や仕様にするのではなく、車いすユーザーの可動寸法を、新電動車いすによって健常者のそれに近づける工夫をすることを研究の目的に掲げました。そのため、研究当初は色々と車いすの調査から始めました。試行錯誤している中でメカナムホイールという45 度に振られた樽型のタイヤがいくつも束ねられた車輪を装着した車いすに巡りあったことで、課題解決の道筋が見え、研究は一気に新たな展開へ進むことになりました。まさに目から鱗でした。メカナムホイールは4輪の向きを変えることなく各車輪を個別モーターで駆動することで前進後退だけでなく真横、斜めへの移動が可能で、最小回転は直径100cm以内で済むという優れものです。この車いすを利用すれば、ユーザーが回転するために必要な直径150㎝のスペースを確保したバリアフリームではなく、一般客室でも対応できることになります。この小回りが利く車いすによって、劇的にバリアの壁が取り払われることに気づきました。

メカナムホイール

ムーンウォークローズ

東京国立博物館にて

e-WA プロジェクト始動

メカナムホイールを装着した試作機の制作等を行うe-WAプロジェクトが始動し、具体的に展示や実証実験等プロジェクトが推進されていきます。1号機ムーンウォークペガサス号、2号機ムーンウォークローズ号と名付けられた試作機は2019年、2020年の国際ホテルレストランショーにて発表し、その動作の確認と有効性を示しました。(動画1)

宿泊施設館内でその車いすに乗り換えてもらうことが条件となりますが、高齢者も含め上肢の使える車いすユーザーであれば、大変大きな利便性を享受できるという可能性が示せたのではないかと考えます。宿泊施設事業者にとっても、面積や建築平面構成に大きな負担を掛けずに、通常の客室を車いすユーザーにもご利用いただける有効性を示しました。2020年には、ザ・ロイヤルパークホテル東京羽田の客室(約16.3㎡)をお借りして実証実験を行いました。(動画2)若干の家具の移動を行なうことで車いすの走行に支障はなく、浴室の内法寸法約1600×2000mmという十分な余裕こそありませんでしたが、横移動が可能であるこの電動車いすのメリットが十分に実証されました。また座面が40cm昇降する機能を持たせたことでハンガーフックやドアアイの利用、高い位置のタオル棚からのバスタオルの取り出し、浴槽や便座への移乗等利便性を確認することができました。この機能は宿泊施設のみならず、博物館や美術館などの都内観光施設等の展示物を見学する際にも健常者と同じ目線で作品鑑賞が出来るのではないでしょうか。

ムーンウォークローズ

東京国立博物館にて

TOTTEMO

図1 客室平面図プロトタイプ

新UD客室のさらなる進化 -客室ドアを見直す-

一般的に客室のドアは遮音性能、防火性能確保のためクローザーの力も加わり大変重く、特に車いすユーザーにはストレスを感じるものとなっています。このストレスを軽減するために、開き戸開閉補助具「TOTTEMO」を開発しました。また、クローザーについてはすでに閉鎖遅延の調整が可能なタイプが製品として流通しており、この調整で車いすユーザーの操作感(動画3)はかなり改善されます。しかし、部屋から出るとき、ドアを手前に引くために前傾しなければならず、ストレスはなくなりません。いっそのことドアの開閉を自動化することはできないだろうかと研究のターゲットをシフトするに至りました。また、客室のドアは平面的な納まりや、遮音性能、防火性能を意識して開き戸を選ぶことが多いですが、車いすユーザーや高齢者にとっては引き戸が使いやすいです。そこで、ホテル客室のドアを引き戸とし、その開閉の自動化の実現に向け挑戦しています。2021年には開き戸の自動化(動画4)を、2022年には引き戸の自動化(動画5)を国際ホテルレストランショーにおいてモックアップ展示を行い、その可能性を示しました。またこの引き戸を採用し、試作機 2 号を活用した時のプロトタイプの客室平面図(図1)も提案しています。

e-WAプロジェクトは今後も、健常者にも抵抗感なく、また宿泊施設事業者にも受け入れやすい新UD客室実現に向け研究開発を進めていきます。

TOTTEMO

図1 客室平面図プロトタイプ

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