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D-SHiP32の取組み 東京都港区海岸1丁目1−1 アクティ汐留 2916

皆で一緒に社会にある障害を解決し、次世代の子供たちに嫌な思いを経験させない取組み

身体機能の障害がある人やその家族は生活する中で、一般の人よりも「嫌だな」という経験や思いをいろいろすると言います。「自分が感じてきた嫌な経験や思いを次世代に残したくない」と、社会にある課題に皆で気づき、解決していくための活動をしているのがNPO法人D-SHiP32です。D-SHiP32の取組みについて、代表理事の上原大祐さんにお話しを伺いました。

取組みの3つの柱

D-SHiP32は2014年12月に発足しました。私は、パラアイスホッケーの選手で2010年のバンクーバー大会では銀メダルを獲得したこともあり、講演などで話をさせていただく機会があります。ある時に参加していた障害のある子供の親御さんから「障害のある我が子に普通の生活をさせるのが精一杯で、スポーツをさせる余裕がない」と言われました。
その時、自分の親も私が小中高と普通級に通い、クラスの子と同じことができるよう学校や役所など、いろいろな所に頭を下げていたことを思い出しました。親御さんにも余裕がなければ、障害のある子供たちは皆が当たり前にやっているスポーツさえもできないことに気づき、「障害のある子供たちにも当たり前にスポーツを楽しめる環境を作りたい」という思いでこの活動を始めました。最初は、障害のある子もない子も誰でも一緒に参加できるキャンプや、長野県で畑を開墾して野菜を作るといったことから始め、今は①親向け、②子供向け、③社会向けの大きく3つの取組みをしています。

障害のある子供の親こそいつも笑顔でいて欲しい

親向けは、元々、「親御さんをサポートするプログラムを作りたい」という思いがこの活動のきっかけでもあったので、障害のある子供を預かり親御さんの自由な時間を作るという取組みです。D-SHiP32という名前は、DはDreamで、32は子供たちを表します。「子供たちに夢を運ぶ、子供たちの夢の船」というコンセプトでつけたのですが、親御さんはたまには港に戻って休んで欲しいという思いから「おやポート」と言っています

障害のある子供を持つ家庭は、子供のケアやサポートに多くの時間と労力を使います。いつも家族全員が笑顔でいてもらうために、一休みして自分達の時間を取ってもらう必要があります。また、障害のある子供に兄弟がいる場合、親御さんは障害児のケアに重点がいってしまうため、兄弟は我慢を強いられていることもあります。たまには兄弟も親を独占する時間が必要です。
この他、家族全員誰でも参加できるキャンプも開催しています。私も健常児の弟がいるのですが、「弟は参加してもいいけれど、お兄さんはダメ」という思いを何度も経験しました。その経験から、私たちのキャンプは誰でも受け入れています。夜にはメンバーが子供たちの面倒を見て、親御さんたちの晩酌の時間なども設け、障害のある子供の親たちの交流の場も作っています。親御さんが笑っていると、子供たちも笑顔になるので、親御さんにはいつも笑顔でいて欲しいと思います。

障害のある子供たちにたくさんの「できた」を経験してもらう取組み

2つ目の子供向けプログラムは、障害のある子供たちに「できた」を経験してもらうプログラムです。キャンプでは芋掘りなどもやるのですが、車いす利用者にとって畑の土は車輪が動かなくなるので、大きなバリアです。バリアがあると車いす利用者は、やらせてもらえず待たされることが殆どです。しかし、畑にビニールシートを敷いてしまえばバリアはなくなり、車いす利用者も皆と一緒に芋堀りができます。ちょっとした工夫でバリアはバリアでなくなるのです。

また、「キッズチャレンジトリップ」というプログラムを行ったこともあります。飛行機に乗ったこともない車いすを利用している子供2人が家族の付き添いなしで、バンクーバーで「自分達のやりたいことを自分達でやる」というプログラムです。子供たちはバンクーバー到着後、自分達の行きたい所ややりたいことを調べ、私たちに「ここに行きたい」と伝えます。全て公共交通機関を使って移動するので、最初は、行き方はこちらで調べて「何番のバスで行ける」と教えていました。次に子供たちが行きたい所を告げてきたときは「ここに行くには何番のバスで行けるみたい」と自分達で調べて伝えてきたり、「ホテルの人にこういうふうに言って地図をもらっておいで」というとちゃんと英語で話して地図をもらってきたり、たくさんの「やりたいことが自分でできた」を経験してもらえました。子供たちがこんな短期間で成長するというのを目の当たりにして、私たちも驚きました。メンバーは私も含めて全員で4人、そのうち3人が車いす利用者だったのですが、バンクーバーではエレベーターにたくさんの人が並んでいても車いすの私たちが並ぶと必ず先に乗せてくれました。普段、日本だと「すみません」といいながら移動しているのですが、バンクーバーの旅は笑顔で「ありがとう」と言う機会がたくさんあり、子供たちにとって良い経験になったと思います。
ただ、外出もできない子供たちもたくさんいます。この子供たちにもいろいろな経験を届けたいと、今は教育メタバースに力を入れています。

大人こそ気づいて欲しい社会のバリア

3つ目の大人向けプログラムは、主に研修事業を行っています。当NPOではスポーツ用車いす、ボッチャ道具などを持っており、これらを活用した研修や、「車いすスポGOMI」というプログラムに取り組んでいます。「車いすスポGOMI」は、車いすを利用して町の中でゴミ拾を拾いながらバリアに気づいてもらうというプログラムで、企業だけでなく修学旅行などでも活用いただいています。

車いすの扱い方の研修など、よく室内などで行われるケースが多いのですが、それでは町の中にあるバリアには気づけません。「車いすスポGOMI」は、最初に車いすの扱い方を学んだあと、チームごとに町の中で様々なミッションをこなしながらゴミを拾い、ゴミの量や与えたミッションのトータルポイントを競います。この発想は、ロンドンパラリンピック大会でロンドンに行った際に公園を散歩していたら、おじいさんが「右に行くと階段しかないけれど、左に行けばスロープだから君はそっちに行った方がいいよ」と教えてくれたことにあります。町の情報を知っているだけで、車いす利用者のサポートができるのです。「知る」ということはとても大切で、「知るって楽しい」と感じながら様々な障害について知ってもらうプログラムを作っています。
よく、「経験値」と言いますが、私は「経験地」と言っています。その地に行くからこそ聞ける音、見られるもの、人とのコミュニケーション、美味しいと感じること、これらが経験値になるのです。障害のある子供たちと家族は、一般の人と比べると、外出に様々な制限がありますが、いろいろな土地に行って、たくさんの「経験地」を感じて欲しいと思っています。ただ、自分達だけではできることも限られてしまいます。いろいろな人たちからアイデアをもらったりコラボレーションしたりしながら進めていけたら、嫌な思いをしながら生きていく子供たちの数が次世代ではもっと減るのではないかと思っています。

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