藤田観光の初代社長、小川栄一氏は「健全で、楽しい憩いの場を提供すること」を念願とし、それには「これまで一部の階級に所有されていた邸宅・別荘・庭園等を、多くの人びとが利用できるようにすることこそ社会的事業である」と確信しました。この考えから、ルーツである藤田家の邸宅・庭園をホテルおよびレストランとして営業することを手始めに観光事業を興しました。 この「潤いのある豊かな社会の実現」という創業の精神は、社会の変化、時代の流れ、また経営者によってその実現の手段・方法を異にするとしても、事業経営の基本理念として、藤田観光グループのホテル椿山荘東京のスタッフ全員に脈々と受け継がれています。ホテル椿山荘東京のマーケティング支配人 眞田あゆみさんにお話をお伺いしました。

多くのお客様にとって快適にお過ごしいただくために

お孫さんまで三世代のお客様に愛されるホテルを目指して、ご高齢の方や障害のある方の視点から考えることはもちろん、小さなお子様連れの方などにとっても充実した時間をお過ごしいただけるサービスを心掛けています。

四季折々の日本庭園を車椅子をご利用のお客様にもお楽しみいただけるように、一部の高所エリアを除いて段差を無くしています。

庭園を一望する数寄屋造りの料亭「錦水」の個室では、掘りごたつ又は椅子・テーブルでお席をご用意して、赤ちゃんから老若男女問わずごゆっくりとお食事とご歓談をお楽しみいただけるよう配慮しています。

ホテル客室にはユニバーサルルームを４部屋ご用意しています。客室バスルーム扉の自動化、跳ね上げ手すりの設置、シングルハンドのベーシン設置等を行いました。まだ改良点もありますが、様々なお困りごとを抱えている方々とそれぞれのご相談に応じて最善のサポートを行いたいと心掛けております。詳細は下記ホームページでもご覧いただけます。

現場からの意見を形にしていく

これまでバリアフリー化への改善を進めると共に、ユニバーサルデザインへの取組みに挑戦し続けていますが、気付けていない点もあると思っており、ホテル全スタッフからの意見を吸い上げています。
ひとつの取組みの例として、車椅子利用のスタッフとその家族に実際に宿泊をしてもらい、仕事としてではなくホテルゲストとして気付いたことを他のスタッフと共有してもらいました。

また、新たな取組みとしてはこの夏、２カ所目の「ジェンダーフリートイレ」を設置いたしました。このきっかけとなったのは、通常の目安箱とは別に、当ホテルの70周年を記念した取組みに関して従業員からの意見を聞く機会を設けたところ、1,000件を超える意見が集まり、中でも多かったのがジェンダーフリートイレ設置の要望でした。バンケット棟にはジェンダーフリーのお手洗いが１カ所ありますが、別棟のホテル棟にはございませんでした。実際にスタッフがお客様と接する中で、介助者と介助される方のジェンダーが異なることも増えており、いずれの棟にいらしても、近くにジェンダーフリートイレがあることがお客様の利便性を高めると感じたスタッフからの複数意見を元に設置を決定いたしました。

さらに、現場スタッフの希望により、毎年東京都が行っている「宿泊施設バリアフリー化促進アドバイザー派遣」を依頼してバリアフリーの専門アドバイザーからご意見をいただきました。日本庭園が一望でき、コネクティングルームとしても利用できるユニバーサルルームは国内・海外問わず多くの需要が見込まれるとのことでした。ホームページなどでもそのことをもっと積極的にアピールしていくべきとのアドバイスもいただいています。こうした様々な意見をこれからも検討し、形にし続けていきたいと考えています。

多様性を尊重し、多様化するお客様の声を実現していきたい

私たちホテル椿山荘東京（藤田観光グループ）は、お客様の人生の様々なシーンに寄り添う事業を展開しております。人生の節目節目で発生する様々なニーズやご要望を汲み取り、これまで培った歴史・文化・伝統を守りつつ、新たな価値をご提供することで、事業をさらに進化・発展させたいと考えております。

また、ご来館くださるお客様の多様性を尊重し、快適なご滞在を追求してまいりたいと考えております。同時に従業員においても、仕事への価値観や働き方の多様化がさらに進む中、個々のユニークな意見や考えを尊重することで、新たな発見が生まれると同時に、スタッフも自らの仕事に誇りと自信をもって、会社とともに成長し続けられると考えています。全てのお客様の多様な個性を尊重できる社会の実現に向けて、お客様や従業員、パートナー企業様とともに今後も取り組んでまいります。