農業・農地を活かしたまちづくりガイドライン(平成19年度)

「都市と農業・農地の共生」という基本的な考え方のもと、農業・農地を活かしたまちづくりを進めようとする区や市、農業者や地域住民等が参画し、プランの作成とその取組を進めていくための指針として、「都民の暮らしが潤う東京農業推進協議会」(会長 武内和彦東京大学副学長)より意見を聴取し策定しました。

ガイドラインの特徴

1.東京における都市農業・農地の果たす役割を農業生産のほか、5つの多面的機能に分類

レクリエーション・コミュニティー機能

都市農地は、観光農園や市民農園など、余暇を活用して農業体験をしたいという都民ニーズに応えるため、身近なレクリエーションの場を提供しています。

近年は、農業体験農園の開設や農業ボランティアの受け入れなど、都民と農業者との新たなふれあいの機会が増え、レクリエーションの場としてだけでなく、都会の中の新たなコミュニティーの場や、豊かさを実感できるライフスタイル実現の場としても活用されています。

教育機能

東京の農業・農地は、自然が少ない東京の都市部にあって、子どもたちが農作物の生育を通して、自然の仕組みや営みを学ぶフィールドを提供しています。

また、様々な経験を通じて食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる人を育てる「食育」の場となっています。

防災機能

東京の都市農地は、巨大な都市の中にある貴重なオープンスペースであり、地震や火災などの災害時には、避難場所や仮設住宅の建設地などとしての活用が期待されます。

また、近年、局地的な集中豪雨による浸水被害などが発生していますが、都市農地はこうした被害を抑制する機能を持っています。

環境保全機能

都市機能が高度に集積する東京は、緑地が年々減少し、ヒートアイランド現象などの様々な環境問題も発生しており、その改善は東京の重要な課題となっています。

このような中で、農地は都市の貴重な緑地として、都市環境の維持に重要な役割を果たしています。

景観形成、歴史・文化の伝承機能

ビルや住宅が立ち並ぶ市街地に住む人々に対して、緑豊かな都市農地は、潤いとやすらぎを与える田園風景を提供しています。

また、江戸時代の農村の面影を今に残している農家の屋敷林や蔵の風景、街道沿いに開拓された短冊状の畑地、農業にまつわる史跡や行事などは、歴史や文化の薫る都市の形成に重要な要素となっています。

2.農業・農地の持つ機能を活かしたまちづくりの方向を8つ示し、優良事例を紹介

まちづくりの方向優良事例
1.都民に安全でバラエティー豊かな農畜産物を提供する 道の駅「八王子滝山」など(4事例)
2.様々な地場産業と連携して地域を活性化する 立川市「うどパイ」など(2事例)
3.身近で楽しめるレクリエーションの場を提供する 観光農園、花摘みとり農園など(3事例)
4.都会の中の新たなコミュニティーを創出する 国分寺市「援農ボランティア活動」など(3事例)
5.農業を通じて健康で豊かな心身を育む 日野市「農の応援団」など(4事例)
6.都民が安全で安心できるまちづくりに寄与する 葛飾・足立区「農地の防災協定」など(2事例)
7.都会の中に潤いや安らぎのある景観を提供する 羽村市「花いっぱい運動」など(2事例)
8.地域の農の歴史・文化を大切に引き継ぐ 練馬区「土支田農業公園」など(2事例)

ナシの袋がけ

ナシの袋かけの体験学習

うどパイ

立川名物「うどパイ」

防災時の避難場所

生産緑地と避難場所の看板

3.農業・農地を活かしたまちづくりのモデルを5つに分類し、将来像を提示

まちづくりのモデル将来像

地場産業連携・活性化タイプ

地場産業連携・活性化タイプ

  • 採れたての野菜や果実などの地場農産物が、農産物直売所や商店街、量販店のコーナーなどで販売され、地元の消費者に喜ばれている。
  • 農家の大型栽培施設の中では、農業者と一緒に、地域住民がパートタイマーとして鉢花の管理やコマツナなどの収穫作業をしている。
  • 農家では、新たに加工施設をつくり、自家製のジャムや漬物、採れたて卵を材料にしたケーキなどを販売し、おいしさが口コミで広がっている。
  • 地元の商店街では、菓子店で特産の農産物を利用したケーキや、飲食店で地元野菜を素材にした料理を商品化し、まちの名物になっています。
  • 観光パンフレットには、農産物共同直売所やみやげ用の地場の農産加工品が紹介されています。

レクリエーションタイプ

レクリエーションタイプ

  • 観光農園では、農産物の加工体験ができたり、お茶を飲みながら休憩ができたり、お客様が一層楽しめるサービスの向上に努めている。
  • 週末には、都心からも親子連れが訪れ、果実のもぎとりや花の摘みとり、農産物直売所で地場産の農産物を購入したりして楽しめる。
  • 農家が、畑の周りを緑化植物や木柵で美しく演出し、開放感ある景観を作り出し、植木畑では樹名板や解説板を付け、人々が心地よく畑の周辺を散策できるようになる。
  • 農家は、おしゃれなログハウス風の直売所で、他では作っていない珍しい農産物を料理レシピなどと一緒に販売するなど、個性化が進み、魅力が増す。
  • 地元自治体が、この地域を訪れる人のために、散策コースを設定し、街角に案内板を置き、絵地図を作る。

地域コミュニティー形成タイプ

地域コミュニティー形成タイプ

  • 農業体験農園では、園主が工夫を凝らした新しいサービスに努めるとともに、利用者間のネットワークもでき、いつも賑わっている。
  • 労働力が足りない農家を地域の人々が援農ボランティアとして支えています。定年退職を迎えた人々もボランティアとして農作業を手伝い、生きがいにもなっている。
  • 農家は畑の一部を近所の小学校の学童農園として、子どもたちに農作業体験の場を提供しています。子どもたちは農家の話を聴き、農業の苦労や楽しさを学んでいる。
  • 農家の直売所では、近所の人たちが、採れたての野菜や果物を前に、農家から、おいしい料理方法やジャムの作り方などを熱心に聴いている。
  • 地元の企業も、農業・農地を活かしたまちづくりに協賛し、畑周辺への花の植栽や、絵地図や案内板づくりなどを支援している。

安全・安心まちづくりタイプ

安全・安心まちづくりタイプ

  • 農地を災害時の緊急避難場所や復旧資材置き場などとして活用できるように、農家の協力のもと、自治体と農業協同組合などが協定を締結している。
  • 協定農地には、「防災協力農地」の看板が立てられ、地域住民に大きな安心感を与えている。
  • 地域の広域避難場所や防災協力農地がわかる防災マップが地域住民に配布されている。
  • 自治会レベルで、防災協力農地や防災井戸の活用を含めた、防災訓練が行われている。
  • 防災協力農地の取組により、地域住民の防災意識と都市農業・農地に対する理解が深まっている。
  • 地域の人たちは、防災協力農地で生産された農産物を購入し、農作業を手伝ったりして、農家を応援し、農地を大切にしている。

美しい田園風景保全タイプ

美しい田園風景保全タイプ

  • 水田には、春先にレンゲが咲き、収穫の秋には近くの子どもたちが案山子を作り、懐かしい田園風景を作っている。
  • 水田の用水路には、安全に配慮した親水ポイントが造られ、子どもたちが小魚や虫を採り、観察をしている。
  • 年に数回、農家と地域住民が協力して、用水路の清掃作業などが行われている。
  • 畑や雑木林の広がっている地域では、ハイキングのグループが、畑の傍らの直売所で農産物を買いながら、蔵や屋敷林のある農家の佇まいなどを見ながら散策をしている。
  • 地元では、この地域を訪れる人のために散策コースを設定し、街角に案内板を置いたり、絵地図を作ったりしている。また、農業にまつわる歴史・文化の解説板を設置している。

4.区や市で、農業・農地を活かしたまちづくりを進めていく手法を提示

(1)区市における推進体制づくり

  1. 課題と基本的考え方の整理
  2. 関係部局の連携
  3. 都民の参画

下向き矢印

(2)農業者・地域住民等の参画による推進組織の設置

下向き矢印

(3)農業・農地を活かしたまちづくりのプランの作成

  1. まちづくり対象エリアの設定
  2. 農業者や地域住民等の意向やアイディアの把握
  3. プランの検討
  4. 農業者や地域住民等との連携
  5. 区市関係計画との連携・調整

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農業・農地を活かしたまちづくりのプラン

下向き矢印

(4)プランの実現に向けた多角的アプローチ

  1. 様々な主体の参画によるプランの実現
  2. 各種事業・制度の活用

お問い合わせ

産業労働局 農林水産部 農業振興課 企画調整係
電話:03-5320-4831

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