第7回 時代に合った新しい林業を実践 中島 邦彦さん(林業/青梅市)

 青梅市の北部に位置する成木(なりき)に山林を所有し、代々林業を営む中島さん。もたらす恵みは木材だけではない。林業には、木を育てて出荷する以外にも重要な役割がある。山林の保全だ。健全な山林は清らかな水や新鮮な空気を育むばかりではなく土砂災害から人々を守る。
 「治山治水が山の関係者の指針の一つ。山を治め、水を治めることは、国を治めることにつながる」。

 

 中島さんの仕事場は、適度な陽光が差し込む気持ちの良い山林だ。適正な密度管理のため木を間引くように伐採し、搬出する間伐林業を、長男の大輔(だいすけ)さんと二人で営む。一定区画の木を全て伐採する皆伐(かいばつ)と比べると、間伐林業は木の搬出も困難で手間もかかるが、森が健全に育つ。
 約半世紀、林業に携わる中島さんは、「うっそうとした藪(やぶ)が風通しの良い林になり、安全な作業道ができる。それが誇りであり生きがい」と目を細める。
 林業を継ぐことは自然なことと考え家業を継承。その当時は順調だった。しかし時代の変化で、経済的に厳しい状況になったことも。現在は、木材は売れているものの、採算が取れないという。「文化は変わっていくから、時代に合った林業を少しずつ取り入れて皆さんの期待に応えられる仕事ををしていきたい」とアイディアを練る。

   

 参加費が必要なトレイルラン大会などのスポーツイベントに、作業道や林道を提供し、より魅力的な催しとなるよう協力。山が山の保全の資金捻出を生み出す仕組みとする。さらに、木材と文化を一緒に輸出するという発想から茶室に目を付け、「茶室を輸出すれば、海外と多面的な交流が深まるのでは」と、次の一手も思案中。
 成木の林業家の夢は尽きない。

 

森には疲弊した体をリフレッシュさせる力があると語る