第13回 地域材・多摩産材を生かして未来へ 浜中 英治さん(製材・建築業/日の出町)

東京の西に位置する日の出町で製材業を営む浜中英治さんは、大学を卒業すると同時に父の仕事を継いだ。約50年前のことだ。当時は山から木を伐(き)り出す木材業が中心で、加工は共同製材所を借りていた。浜中さんの代になり、製材業へと事業を拡大。今では丸太を挽(ひ)く製材機3台、表面を滑らかにする加工機2台、木材を乾燥せるための乾燥機3台を備える。木材は3カ月~半年かけて製材、乾燥して材木となっていく。

 2,500坪の工場敷地内には常に大量のスギやヒノキの木材が積み上がり、その大半が多摩産材。地域材が集まって市場が立つ多摩木材センターで月に2回、4tトラックに25台分ほどの原木を仕入れてくる。いい木材は製材しても曲がらない。切り口と木肌で見極める「まぐろと一緒」と笑う。その技術と眼力は、父の背中を見ながら工夫を重ね、独自で会得した。 

 浜中さんは「木がかわいそうだ」と言う。50年、100年と時間をかけて育った木の対価が低いからだ。東京の木は全国レベルで比べても品質がいい。だからこそ「木に失礼じゃない仕事をしないとね」と真摯に取り組む。多摩産材を使って良質な製材を提供するうち、公園や施設の遊具や設備等の施工の依頼も増えていった。

   

 2人の息子は、浜中さんと同じように大学卒業とともに家業に就いた。今では長男が工場全体を取り仕切り、建築士の次男と娘が設計・施工を手掛ける。コンセプトは、自家製材した地域材で建てる木の香りがする家だ。これまでに小さなリフォームを含めると約100件を手掛け、工場近くには多摩産材で作ったモデルハウスも公開する。「伝統工法で作れば日本の木材も生きる」と細めた目が鋭く見据える先は、次世代の担い手たちが築く地域材の未来だ。

皮も端材も捨てるところなく、角材や木片チップ等に加工して活用