第10回 これからも自分で決めた道を行く 百井 三亀男さん(タカベ刺網漁業/式根島)

 竹芝客船ターミナルから南へ約170km、伊豆諸島の中央付近に位置する式根島。美しい大自然に囲まれたこの島で漁業を生業とする百井さんは三代目で、今となっては珍しい魚であるタカベの刺網漁を続けている。

 父の勧めで内地の大学へ進学したが将来の道に迷い、卒業後地元に戻り漁師を目指す決心をした。漁師の厳しさを知るゆえ、息子を同じ道に進ませたくなかった父は激怒したが、百井さんを自分の船に乗せた。漁のいろはは一切教えず、「背中で語る」タイプだったという父は、一緒に漁をするようになって10年経った時、「これからは一人でやれ」と一言。新しい船の建造を手配してくれていた。

 

 仕事を始めた頃は漁師の間で「東京都の魚」と言われたほどたくさん獲れたタカベも、気候や海水温の変化によりだんだんと姿を見せなくなり、漁師側も変化を強いられた。皆が楽に、もしくはより多く稼げる魚へと移っていく中、割に合わないというタカベ漁を今も続ける百井さん。「自分は家業を継いだから、これが自分で決めた仕事だから」と話す。跡継ぎはいない、子供たちは大学へ行かせたという百井さんに理由を尋ねると「漁の厳しさを知っているから、同じ道には進ませたくなかった」と笑う。

   

 「65歳から75歳が一番いい仕事ができる」とは学生時代の恩師の言葉。既にその年代に差し掛かった百井さんは、タカベがオフシーズンとなる10月から3月もアカイカやイセエビを獲るため船を出している。「現状維持が一番。恩師の言葉のとおり、これからも漁を続けていくのが目標」と語った。